最後の呟き

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『しょう:お前を、許さない。』  それがアイツ──山垣昇也(やまがきしょうや)がSNSに刻んだ最後の呟きだった。  遺書とするにはあまりにも短く乱暴で、不穏な気配と尻切れ蜻蛉(とんぼ)の余韻を密かに含んでいた。その呟きの数分前から昇也は、およそ自然の景観を皆に堪能してもらおうという意志の籠っていない写真(藪に隠れた石階段や林冠から覗く青空、そして何かの建物)やら、『しょう:もう少しで到着。』や『しょう:ここに来る意味が俺にはあった。』といった行動進捗なんかを垂れ流していた。  平間はステアリングを強く握った。心に差した翳りと同じだけ、曇天の色合いも深くなったようだった。  結局、高校を卒業してから一度も顔を合わせることもなく昇也は逝ってしまった。山の斜面を滑落しあまつさえ河川に転がされた為に遺体の損傷も激しく、葬式の場ですらそれは叶わなかった。警察はSNSに関しては無頓着で、単なる事故として処理したそうだが平間は納得していなかった。
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