最後の呟き

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 平間の眼前には一軒の廃屋が聳えていた。自然の淘汰は激しく、家族を護る建築物としてのアイデンティティはあちこちが見るも無惨に崩壊していた。一階や二階に取り付けられた窓は全てが割れて、闇が大口を開けている。形骸化、という表現が相応しいほどにがらんとした雰囲気があった。ヒトから魂を抜けばきっとこうなるだろう。  平間が踏み入った、元は庭だったような地面は背丈のまばらなジャングルと化し、そのうち上昇志向の強い奴らがぼろぼろになった家の壁を縦横無尽に這いずっていた。生命力が畏怖に繋がるなんて皮肉だなと場違いに思った。  ここに以前、世間から逃避せざるを得なかった家族が住んでいたのだ。どのような営みを送り、やがて彼らがどこへ消えたのか。平間に分かるはずもなかった。 『しょう:大丈夫だよ、多分。』  あれがまともなアイツと交わした最期のやり取りだった。もしも年齢にそぐわない童心を捨てていられれば、悲劇は未然に防げたのだろうか?  昇也、お前は一体、何を見た?  グニり。
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