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今年もまた、桜の咲く季節がやってきた。
去年よりも少し暖かさを携えた空気に満開に咲くピンク色の桜。
一歩外に出れば一面が春の陽気に包まれている。
校庭に咲く大きな八重桜の木を小夜川 累は静かに眺めていた。
風に吹かれハラハラと落ちる花びら。
舞って地面に落ちた桜の花びらを足で踏み付ける。
桜も春も大嫌いだ。
散っては短い間に消える桜が、呑気にやってくる春の暖かさが──。
春と共に出会い消えた彼を思い出して八重桜から目を逸らす。
短い余生を生きた彼を連れ去った春が、彼の眠りを永遠のものにした桜が二人をいつまでも繋げるこの季節が大嫌いだ。
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