4人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
桜ちらつき空の果て
彼との出会いは、高校の入学式。
新品の制服に身を包んだ生徒達がそれぞれの足取りで新たな門出の門をくぐる。累も同じように彼らに紛れて校舎へと向かっていた。
腰まで伸びた黒髪が春の風に揺れる。
お祝いをするようにヒラヒラと舞い散る桜の道を歩く中、累の目に一人の男の子が映った。
大きな八重桜を見上げる男の子の横顔。白い肌に整った顔立ち、背が高く、栗毛色の髪の毛がふわっと揺れている。
新品の制服から累と同じ新入生だということが分かった。
男の子が落ちてくる桜の花びらの中に手を差し出す。
その綺麗な仕草や横顔に累は歩く足を止めて見入っていた。
まるで夢の時間のようにハラハラと花びらが男の子の宙を舞っては落ちる。
息をするのもはばかられるほど見入っていた。花びらを手に取って嬉しそうに微笑む男の子の視線が不意に累を捉えた。
透き通った瞳が落ちる花びらがとても綺麗で本当に夢を見ているようだった。
最初のコメントを投稿しよう!