charge

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澤村は校門を抜けると、そのまま一階の校舎に入り職員室前のトイレに入り、大便所の中に入り施錠した。 そして一度大きく深呼吸をして洋式の便器に腰を下ろした。 「ふぅ…。」 その目は虚ろであるがその瞳は血走り、今にも血涙が滴り落ちそうだ。 澤村は小さなリュックを開き、ガムテープと大き目の牛刀を取り出した。 その牛刀を左諸手で握り締めて、その左手にガムテープを何度も何度も巻き付ける。 うんうんと頷きながらガムテープを巻き付けて牛刀と左手を完全に固定した。 「よし。楽しむよ?」 澤村はリュックから新聞紙に包まれた何かを学生服の右ポケットに入れるとゆらりと洋式の便器から立ち上がった。 澤村はトイレから出ると、驚くほどのスピードで走った。 その足は自分が関わりたかった模擬店がある教室へと向かっている。 「凄い!凄いな!僕こんな速く走れるんだ!不思議だな!なぁんにも…なぁんにも…」 何も聞こえない。 誰も自分に気が付かない。 澤村の目にチョコバナナの看板が入ると、そこで急停止して教室に入った。 澤村の侵入にその教室に居る人間は誰も気が付かない。 調理に携わる生徒が五人、客が三人全員が澤村の存在に気が付いた時にはもう遅かった。 八人全員が腹から血を流していたのだ。 悲鳴を上げる暇も無い。 「おぉ…温かいね…。調べた通りだよ。腹刺すと声出せないね。」 「…ク、クソ村…て、テメ…テメ…テ…」 澤村の足元で八人の内の一人が血だらけの腹を押さえてうめき声を出している。 「アレ?声出してる…。」 澤村はその一人の首に牛刀を当てた。 そして深くえぐる様にその刃を引いた。 血しぶきが澤村の胸元にかかる。 「ありがとう。」 澤村を小さな声で呟くとその教室から出た。 「学ランってださいけど、血が目立たないよね。やっぱり全てが僕の味方をしてくれてる。最後くらいなんもかんも上手くいってくれないと僕の人生何なんだって感じだもん。」 澤村はまた走った。 次なる目標は血の惨劇に見舞われた教室の三つ隣の教室だ。 「美術展…。あぁ…美術部…」 澤村はその教室に入ると、受け付けの女子生徒と目が合った。 「クソ村…?な…ええええ!!??」 受け付けの女子生徒は澤村の左手に装着された異形のものが目に入り叫び声を上げた。 「砂原さん、ありがとう。」 澤村の動きは普段のものとは全く違っていた。 澤村の言葉と同時にその女子生徒は首から血を噴き出しながら倒れた。 「楽しいな…。文化祭…。」 澤村はしゃがみ込み、血まみれになったその女子生徒の唇にそっと牛刀の先端を当てる。 「砂原さん、綺麗だ。」 澤村は立ち上がり、また走り始めた。
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