彩綾

1/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 僕にとっては運命の恋だった。君にとっては、僕は運命じゃなかった。ただそれだけのことだった。 「千春、こんなにあったかいのに家に籠るなんてもったいないよ」  そう言って君は僕の手を引いて、生ぬるくなり始めた風の下を歩く。君と出会って僕は、散歩というものを知った。世界がこんなにいろんなもので溢れてることを知った。 「ねぇ、千春。また猫背になってる!」  僕の背中を強制的に押し伸ばすように、背骨をぐーっと両手で目一杯押し込む。そんなさあやが愛しくて、背筋をピンっと伸ばした。  
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!