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ああ、またこの季節がやってくる。
春の匂いと共に、静かにそっと……
私は桜が苦手、いや嫌いだ。
あれは思春期を迎えた頃のことだろうか。
満開の桜を眺めていると不思議な気分になった。
風に吹かれて散りゆく桜の花びらを浴び、私の中で何かが目覚める。
――サビシイヨ、ダレデモイイカラ ソバニイテ
分不相応なメイクと香水に身を包み、誰かの温もりが欲しくて知らない街を彷徨う。
声を掛けてくる人たちとその場しのぎの恋愛ごっこ。
「またね」
そういって別れても二度と会うことなんてない。
会いたいとも思わないのだから。
早く散ってしまって。
お願いだから桜吹雪を私に見せないで。
桜を見ると狂うワタシ。
異常なまでに人恋しくなるのは何故?
狂ったのはだれ?
桜の花が舞い散ると私の中でワタシが目覚める。
百の温もりがあっても千、万の温もりを欲するワタシがいた。
いくつになっても変わらない。
桜の季節に狂うワタシ。
ワタシが私に戻るのは桜が全て散ったとき。
桜は私にとっての狂気であり、ワタシの狂喜だった。
だから、私は桜が嫌い……
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