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「ガゴギギギ・・・」 豪華な装飾が施されている大扉は 押し開けると盛大な騒音をまき散らす。そして、扉の向こうには巨大な洞窟のような空間が広がっていた。 「ここが王の間・・・か?」 勇者リトは振り返って盗賊ジェミニに疑いの眼差しを向けた。 初めて足を踏み入れる魔王ゼフォーヌの城内をまっすぐ「王の間」へと突き進んできたのはジェミニの案内があったからだ。 どこの屋敷にどんなお宝が眠っているか、盗賊のネットワークでいろいろな情報が出回っているのだ。それは魔王の住む城であっても例外ではなかった。 クレズニク山の中腹にそり立つ壁のような崖があり、そこに寄り添うように魔王ゼフォーヌの城が建造されている。この城の奥にある「王の間」はどう見ても部屋と言えるものではなかった。 もともと火山に空いていた巨大な洞窟が「王の間」であり、そこに付け足すように城が築かれているのだ。 体育館ほどの洞窟内部はいたるところに岩の切れ目があり、そこからドロドロと高熱を放つマグマを垣間見ることができる。 洞窟の最奥部は1段高くなっておりそこに岩を削ってつくった巨大な玉座が据えられている。 数メートルはあるその巨大なイスのオブジェに座り、ひじをついて勇者一行をにらみつけているのが魔王ゼフォーヌだ。 「よくここまで来れたな」 王冠を載せ、王の装束をまとうその姿はまさに王たる風格を備えていた。そしてマグマでできたその身体からは激しい熱気が放たれている。 魔王の傍らには魔導士ドロゥズが腕を背中に回し直立していた。 この広い「王の間」で他に勇者一行を出迎える者は見当たらない。 「このオレを倒すなどと息巻いている人間がいると聞いたが」 魔王は退屈したように大きくため息をついた。 「何か策でもあるのか?」 マグマの身体を持つ魔王は「妖精の剣」でしか倒すことができない。 しかし、勇者一行はその肝心の武器を持たないまま「王の間」の扉を開けたのであった。 「王の間」には大小さまざまな美術品・工芸品が飾られている。盗賊ジェミニはその中のひとつに目を止め、勇者リトに目で合図を送った。 大人の身長ほどの縦長の箱が「王の間」の壁面中央に置かれていた。「妖精の剣」はこの箱の中に収められている。これがジェミニがつかんだお宝の情報である。 「アンタを倒せる剣がここにあるって聞いてな」 ジェミニが人差し指でカギをくるくる回しながら魔王に向かってニヤリと笑ってみせた。 そして、そのままゆっくりと魔王に向かって歩き始めた。 「ほう、よく調べたな」 「王の間」の中央あたりで足を止めたジェミニはそこから魔王に向かってカギを放り投げた。
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