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彼はそれからは私に当たり障りの無い話題を振り、それについて尋ねてくることが多くなった。
そんなとき私はしばらく考えてから答えられることだけを答え、答えられないことには黙ることに。
彼は私が答えなかったことにはそれ以上触れずいつものように穏やかに私に声を掛け、すぐ近くで時間まで過ごした。
私はある日、意を決して尋ねる。
「……あんたは、なぜそんなに顔を隠しているんだい?その、声を聞く限りあんたは良い男だと思うんだが……」
私の言葉はしどろもどろ。
自分のことを尋ねられたらと思うと、どんなに彼の見えない顔が気になっても本人に聞くことができなかったのだけれど、その想いがとうとう抑えきれなくなってしまったらしい。
それほどまでに彼のことが気になってきてしまったのだと私は気付いた。
「気になるのかい?嬉しいな、君にそう言ってもらえて!……けれど、きっと嫌なものを見せることになってしまうよ」
彼は少し寂しげにそう答える。
「……老婆の私に比べれば、まだ良いだろう!だから、その……」
私は内心ドキドキしながらそう促す。
すると彼は乾いたように笑い、うなづいた。
「……アギーが初めて僕に興味を持ってくれたのだから、応えない訳にはいかないね。……もし見ても、僕を嫌わなければ良いけれど」
彼はそう言い、ためらいがちにそっと自身のターバンに手を掛けて外していった。
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