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サクラサク -prologue-
「はあ、今日もかよ…」
俺の家の近くは桜の名所として知られていて毎年たくさんの人で賑わう。
今日も今日とてお祭り騒ぎで気が散るったらありゃしない。
窓の外から眺める景色は迷惑にしかならなかった。
「なんで父さんと母さんはこんな家に住んだんだよ」
桜が嫌いなわけではない。
ただそこに群がる人が嫌いなのだ。
こちとら集中して勉強したいのにさ。
『桜華、元気?』
スマホを開けば出てきたのは通知。
ウゼェ。
友達なのかどうかはわからないが、とりあえず友達。
おっとり系男子という者でいつも寝癖が立っている。
しかもタレ目で顔が整っているもんでみんなから気をつかってもらえる。
ホント、いいご身分だな。
それなのだが、相手するのがめちゃくちゃめんどくさい。
毎日これだよ。しかも同じ内容。
どれだけめんどくさがりでかまってちゃんなんだよ。
と、愚痴は心の中にとどめる。
俺は昔からこういうのはひっそり隠すタイプだ。
なんだか口に出すと怖くなる。
臆病者ですみませんね。
あらら、脱線してしまった。
元気かどうかはさておき、わざと既読にして返信しない。
いつか懲りるだろ。
そう、思ってあくびをしたら、いきなり紙飛行機が顔に飛んでくる。
反射でキャッチしたが、ぐしゃぐしゃにしてしまった。
まあ、いっか。
ポイッとゴミ箱にシュートするとあらぬことに外れた。
わざわざ立ち上がって捨てる。
めんどくさい。
勉強机に戻って参考書を開いた。
次こそは一番になる。
そんな意気込みとともに。
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