サクラサク -prologue-

2/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
いきなりドアの開く音がする。 あー、母親だ。 なんの了承もなく入ってくるのは今は母親しかいない。 「ねえ、聞いて。おうちゃん。」 「何?」 シャーペンの手を止める。 タイミングが悪いんだよ。 「従姉妹の桔梗ちゃんもおうちゃんの通ってる学校に受かったんだって!」 「あ、そう」 「なんでそう、塩対応なの?」 「桔梗は桔梗の人生を歩むって言ってたよね。いちいち報告しなくていい。」 「おうちゃん。まだ気にしてるの?」 「とにかく、今勉強してるから」 「そうね。邪魔したわ。」 母親の声が消える。 はあ、マジでなんなのあの人。 そして、ドア越しにまた声が聞こえる。 「おうちゃん。カフェオレかココアどっち?」 「カフェオレー!」 「はい。わかりました。」 嬉しそうな口調で答えた。 参考書に向かうが、全く集中できない。 元気かなとか、悩んでないかなとか、出てくるのはそれだけ。 もう、昔の話なのに…。 両頬を激しくビンタする。 忘れろ忘れろ忘れろ! もう、桔梗なんか知らない。 それができないのは俺が一番よくわかってるのだけど。 『桜華〜!こっち!』 やめろやめろやめろ。 彼女はもう、             別の人の彼女なんだから
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!