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悪女を懲らしめるための男
『私、本当に顔に自信がないんです。でも、そんな私でも会いたいって言ってもらえて、嬉しいです。今日、凄く楽しみです。待ち合わせの近くまで来たら、また連絡しますね』
『こちらこそ、会うのが凄く楽しみです。僕も近くまで行ったらすぐに連絡しますね』
SNSのアプリを介したダイレクトメールの返信を送り終えた俺はにやけてしまう口元を抑えることが出来なかった。しかし今いる場所は人が行き交う大通り。スマホを見ながらニヤニヤしている男なんて不気味でしかないだろう。とはいえ今は感染症や花粉対策でほとんどの人がマスクをつけている。表情がどう変わろうが、横を通り過ぎる程度でわかるものではない。こういう時はマスクというものがあって便利だ。
「さて……」
画面の上に親指をのせ、さっと左から右へスライドさせる。メールのページを閉じて先ほどやりとりしていた女のプロフィールページへと画面を移動する。プロフィール画像は彼女の身体の写真。ちゃんと調べてみた所加工はしていない。つまり、彼女は顔だけに自信がないだけで、スタイルには自信がある。実際、画像の女性の身体は思わずくびれを抱きたくなるほど美しい曲線を描いていてバストも豊満な方だ。それだけで、男に好かれそうな容姿をしていると言える。所詮顔など、どうでもいい。大事なのは中身だと言われる今の時代であれば猶更。
「だから、たくさん食ってきたんだろ?」
マスクのなかで独り言ちる。
だから俺に依頼が来たんだ。
俺は出会い系にいるやばい女を切る正義。
情報収集を得意とする俺はネットを介してあらゆる悪事をする奴らを成敗きた。
金を持っている男を漁っては捨てる女
詐欺の写真を見せたと訴えて裁判だなんだと恫喝してくる女
何もしていないのに襲われたと叫び無理矢理罪を着せ金をせびる女
どいつもこいつも最終的には金、金、金。
だが、金を持っていても取り消せないものがネットの噂だ。一度晒されてしまえばジ・エンド。仲間たちによって拡散された女たちの罪はあっという間に晒しあげられ叩かれ踏みつぶされていく。文字という荒波で悪魔どもは溺れ息絶える。その姿をみて被害者たちは留飲を下げて俺に報酬を払う。
調子に乗った女どもを懲らしめるだけで飯が食えるこの仕事を俺は誇りに思っているし天職だと感じている。
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