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ハッカー、という言葉に硬直する男に思わず吹き出しそうになった。
にしてもなんて馬鹿な男だろう。確かに悪女をネットに晒して健気な男たちの復讐を手伝ったこともあるようだが、真面目に出会いを探していた女性の名誉も傷つけるのは違う。ましてや、男の逆ギレに味方するのは言語道断だ。
自分が一度美女に引っかかったからといって、他の女性を傷つけていい理由になんかならない。
「くそ、くそ、女なんてみんなクソだ!このクソ女!」
「言うけど、ミオにアンタを仕向けさせたのは誰かを忘れないほうがいいよ」
ワタシの言葉に男の動きがハッと止まる。
そう、何人もの男がマホトに助けを求めた。しかも、すっからかんのはずである資金を持って。残念ながらそいつらは全部警察が仕向けた仕掛人。「仲間を売れば罪を軽くしてやる」という話にあっさり乗ってボスであるはずのマホトを男たちはあっさり裏切ったのだ。
「そんな……嘘だ……クソ……」
信じられないとばかりに呆然とする男は哀れだった。
流石に可哀そうに思ったワタシはさらに追い打ちをかける。
「ま、そういうことだ。お前は誰も騙せねぇ、騙される側の人間だったんだよ」
ワタシの地声に男の顔が跳ねあがった。
しっかりとこっちに視線を向けたタイミングで、ワタシは頭部をひっつかみずるりとひっぺがす。ついでに、男の手錠のついた手をこちらの腰元に密着させた。
みるみる青ざめる男の表情に、おまけとばかりにワタシはクソ女の綺麗な笑みをお見舞いしてあげた。
「騙されてくれてありがとう」
fin
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