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こちらに歩み寄ってきた怜央くんの背後には、大きく振られる尻尾が見えている気がする。
「びっくりさせようと思ってさ、待ち伏せしてたんだけど。オネーサン、変わってねえな」
「変わってないって……」
「褒め言葉。変わらず綺麗で、自分が正しいと思うことしてて、オレの好きな凛さんのまま」
後ろ姿では気がつかないほど、大人びて変わっていると思った怜央くんだけれど。変わっていないのは、怜央くんも同じなのかもしれない。
「長いこと、待たせてゴメン。もうオレのこと好きじゃなくなってたら……それは困るんだけどさ」
そんなことはありえない。そう思うのに、私は言葉に詰まってしまって上手く声を出すことができない。
彼が迎えに来てくれた。その事実がすべてだから。
「桜川凛さん。結婚を前提に、オレと付き合ってください」
たった一言、『はい』と口に出すことができなかった私は、代わりに何度も何度も頷いて。
溢れる涙で顔がぐしゃぐしゃになるのにも構わずに、怜央くんの背中に腕を回したのだった。
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