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36:キミのワガママ
「このまま、怜央くんと恋人になりたいだなんて言うつもりはありません。ただ……もう一度彼と、話をさせてほしい」
怜央くんは私に、好きだと伝えてくれていたのに。
私は一度だって怜央くんに対して、自分の本心を伝えたことはなかった。
「自分に都合のいい話をしにきたわけじゃないんです。本音を伝えて、その上で怜央くんと一緒に、お互いが納得できる結論を出したいんです」
もしもそれが、交わらない未来を選択する結果になったとしても私は後悔しない。
間違った決断を下しているのかもしれないけれど、この恋を中途半端に終わらせてしまうことはできなかった。
「…………」
リューさんは、押し黙ったまま何かを考え込んでいる。
どうすれば私を追い返せるか、私に怜央くんのことを諦めさせることができるか、そんなことを考えているのかもしれない。
無茶を言っていることは承知の上だ。リューさんは怜央くんの保護者なのだから、今この場で通報されて、未成年への付きまといだと言われればそれで終わりになる。
そう考えれば、私の人生を左右することなど彼にとっては赤子の手をひねるより簡単なことなのだ。
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