40:キミの隣

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 こちらに歩み寄ってきた怜央くんの背後には、大きく振られる尻尾が見えている気がする。 「びっくりさせようと思ってさ、待ち伏せしてたんだけど。オネーサン、変わってねえな」 「変わってないって……」 「褒め言葉。変わらず綺麗で、自分が正しいと思うことしてて、オレの好きな凛さんのまま」  後ろ姿では気がつかないほど、大人びて変わっていると思った怜央くんだけれど。変わっていないのは、怜央くんも同じなのかもしれない。 「長いこと、待たせてゴメン。もうオレのこと好きじゃなくなってたら……それは困るんだけどさ」  そんなことはありえない。そう思うのに、私は言葉に詰まってしまって上手く声を出すことができない。  彼が迎えに来てくれた。その事実がすべてだから。 「桜川凛さん。結婚を前提に、オレと付き合ってください」  たった一言、『はい』と口に出すことができなかった私は、代わりに何度も何度も頷いて。  溢れる涙で顔がぐしゃぐしゃになるのにも構わずに、怜央くんの背中に腕を回したのだった。
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