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「桜川さん、悪いんだけどこれもお願いできる?」
「わかりました。ついでに、明日の会議用の資料もまとめておきます」
「ホント!? ありがとー、助かるわあ!」
時刻は定時。
自分の受け持つ仕事はすでに片付いていたので、帰ろうと思えばいつでもそうできた。
けれど、追加された書類の山によって今日も残業が確定する。
向かいの席の同期は必死にキーボードを叩いているので、恐らくまだ今日の分の仕事と戦っているのだろう。
本来なら自分の仕事ではないのだが、どうせ作業を続けるのならと、余分な仕事も片付けてしまうことにした。
「桜川さんって仕事早いよね。正確だし、安心して任せられるよ」
「ありがとうございます」
「あのさ、もし余裕あったらなんだけど……こっちも頼めないかな? 嫁に今日は早く帰ってこいって言われてて」
「構いませんよ、特に急いで帰る用事もないので」
「マジ!? 助かる~、桜川さんならパパッとできちゃうっしょ。じゃあ頼むな!」
嬉しそうに両手を合わせて私を拝む彼は、つい先日おめでた婚をした先輩だ。
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