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「来ちまったもんはいい。……怜央のことか」
「……はい」
やはり、リューさんは私が何のためにここに来たのかを理解しているようだ。
緊張で冷たくなる指先を握り締めて、私は彼から目を逸らさないよう胸を張る。
「もう一度、怜央くんに会いたいんです」
「……それが、アンタの出した結論か」
『本当にアイツを想うんなら、よく考えてほしい』
道端で会った時に、私はリューさんにそう告げられた。その時の答えなのかと、問われているのだろう。
「最初は、大人として怜央くんから離れるべきだと思いました。それが、彼のためだと思ったから」
あの日、リューさんからの言葉を受けた私は、確かにそう思ったのだ。だからこそ、自分の気持ちに蓋をして別々の道を歩むことを決断した。
「怜央くんもそれを理解してくれて、一度は終わりにしたんです。連絡先も消して……だから、今の私に怜央くんとの繋がりはありません」
「賢明だな」
「いい大人が、身の程も弁えずに夢を見ていました。だから、私は私のあるべき現実の中で、生きていこうと思ったんです」
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