36:キミのワガママ

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「……俺からこんなこと言ったなんて知ったら、アイツは怒るんだろうが」 「はい……?」  沈黙の時間は息苦しかったが、不意に落とされたリューさんの声音は、思いのほか優しいものだった。 「アンタのことを諦めるっつー話をしてたんだよ」 「え……」  その言葉に、ショックを受けるのはおかしいかもしれない。だって、怜央くんの気持ちを最初に拒んだのは私の方なのだから。 「本気で大事だと思ってるからこそ、迷惑かける前に諦めるべきだってな」  ああ、怜央くんはやっぱり私のことを考えて、あの時すんなりと私の言葉を受け入れてくれたのだ。  目頭が熱くなりそうで、私は自分の下唇を噛み締めて耐える。 「……けどな、『頭じゃわかってんのに、そうできねえのはオレがガキだからなのかな?』だとよ」  あの日の怜央くんは、私なんかよりもずっと大人びた顔をしていた気がするのに。自分の気持ちを抑え込んで、私の気持ちを優先してくれていたのか。 「アンタに会ったあの日にな、帰ってきた怜央に聞かれたんだよ。アンタに会ったかって」
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