52人が本棚に入れています
本棚に追加
「……俺からこんなこと言ったなんて知ったら、アイツは怒るんだろうが」
「はい……?」
沈黙の時間は息苦しかったが、不意に落とされたリューさんの声音は、思いのほか優しいものだった。
「アンタのことを諦めるっつー話をしてたんだよ」
「え……」
その言葉に、ショックを受けるのはおかしいかもしれない。だって、怜央くんの気持ちを最初に拒んだのは私の方なのだから。
「本気で大事だと思ってるからこそ、迷惑かける前に諦めるべきだってな」
ああ、怜央くんはやっぱり私のことを考えて、あの時すんなりと私の言葉を受け入れてくれたのだ。
目頭が熱くなりそうで、私は自分の下唇を噛み締めて耐える。
「……けどな、『頭じゃわかってんのに、そうできねえのはオレがガキだからなのかな?』だとよ」
あの日の怜央くんは、私なんかよりもずっと大人びた顔をしていた気がするのに。自分の気持ちを抑え込んで、私の気持ちを優先してくれていたのか。
「アンタに会ったあの日にな、帰ってきた怜央に聞かれたんだよ。アンタに会ったかって」
最初のコメントを投稿しよう!