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そこには、『怜央』と書かれたLIMEのトークルームが表示されていた。
「あ、あの……これ……!」
「俺は今スゲー忙しい。忙しいんで、開きっぱなしのスマホの中身を覗かれたって気がつかねえ」
わざとらしい棒読みでそう口にするリューさんは、書類の束を手に視界を遮っている。
私は急いで表示された画面をチェックして、怜央くんの居場所を頭の中に叩き込んだ。
「身に覚えがあんだよ、俺にもな。けど、貫こうとはしなかった。選択を誤ったとは思わねえが……後悔してねえっつったら嘘になる」
過去を思い出すように呟かれた言葉は、私に向けてのものではないのかもしれない。
「用が済んだならさっさと出てけ。こっちは開店準備で忙しいんだよ」
「……ありがとうございました、リューさん」
経営者の顔へと戻ったリューさんは、片手で私を追い払うようにする。
私は深々と頭を下げると、店を後にした。
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