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37:キミの背中
電車に乗って向かった先は、怜央くんのお母さんが眠っている墓地だった。
『母さんトコ行ってくる』
リューさんとのトークルームには、短くそんなメッセージだけが表示されていたのだ。男性同士というのもあるのかもしれないけれど、短文だけのやり取り。
以前話していたように、他の人との用件は本当に最低限で済ませているのだと実感した。
お墓の場所がどこにあるのか、リューさんは私に確認しようともしなかった。それは恐らく、私がすでに知っていると判断してのことだったのかもしれない。
(これは、一応……)
前は急なことだったので、手ぶらでやってきてしまったことを思い出す。
この場所に来るとはいえ、怜央くんとタイミング良く会えるかは運でしかなかった。だからせめて、お墓に備える花を持参しておこうと思ったのだ。
小さな花束を抱えた私は、逸る気持ちを抑えながら記憶を辿ってお墓を目指す。
「……やっぱり、いないか」
足を止めたお墓の周辺に、怜央くんの姿を見つけることはできなかった。
先日と変わらず綺麗なお墓には、真新しい花が供えられている。怜央くんが来た後だったのだろう。
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