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「えっと……ありがとうございました」
中学生たちが見えなくなると、私は思い出したように男性に頭を下げる。彼らの過ちを正そうとしたというのに、結局他人に助けてもらってしまったのだ。
けれど、男性は私の言葉に反応を返そうとしない。
「あの……?」
「オレさ、そんなに見違えた?」
「え?」
「まさか、二年で綺麗さっぱり忘れちまった……なんてことねえよな?」
問い掛けの意図がわからずに彼の方を見た私は、思わず叫んでしまいそうになった。
先ほどまでは暗がりでよく見えなかった表情。
自動販売機の明かりに照らされた彼の顔を、見間違えるはずもない。
「ッ、怜央くん……!?」
私を助けてくれたのは、悪戯を成功させた子どものように笑う怜央くんだった。
「嘘、なんでここに……っていうか、髪、それ……!?」
「オネーサン動揺しすぎ。髪はホラ、社会人だから」
動揺するに決まっている。
よく見れば、髪は以前よりも短くなっているし、あれだけジャラジャラとしていたピアスも見当たらない。
(それに、髪のせいなのかな? 何だか、凄く大人っぽくなった)
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