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調合キットは背嚢にあったが、龍の傷口に足りるほどの量をこしらえるために、俺は何度も山奥に分け入り薬草をかき集めては、薬研ですり潰す必要があった。その間にも龍の息はか細くなり、日は落ちていき、手元はどんどん暗くなった。
妙なにおいのするどろどろの薬を鍋一杯に作り上げたときには、完全に日が暮れていて、周囲は夜闇に包まれていた。焚き火の明かりを頼りに、薬を両手で掬って傷口に塗りたくる。傷口のすぐそばで、火に照らされた鋭い鉤爪がピクリと動いた。
背中を冷たい汗が流れる。だが、闇に浮かび上がった鉤爪はだらりと垂れ下がり、それ以上動かなかった。
薬を塗り終わったときには夜も更けていて、俺はその場に座りこんで意識を手放した。
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