桜の木の下での【嫌な】思い出

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 私は桜が嫌いだ。  どうして嫌いなのか、それはあの日のことを思い出してしまうからだ。――そう、今でもあの時のことを鮮明に覚えている。  あの日は、風が多少強かったが、空が澄み渡っていて気持ち良かった。 (今日は、拓人にちゃんと言わないとね)  そう思いながら、この日のために購入した桜色のお洒落な靴を履くとドアを開け玄関を出る。それから、拓人と待ち合わせした場所へと向かう。  ――しばらく歩き、待ち合わせしている公園の中央にある大きな桜の木の下まで来た。  拓人がまだ来ていなかったので、私は木に寄りかかりながら待つことにする。  それから十分が経ち、拓人が来た。 「愛理、ごめん待った?」 「ううん、そんなに待ってないよ」  そう返答すると拓人は「良かった」と言い微笑む。  その後、桜の木の下でしばらく話をしていた。 「ねぇ、拓人。私、拓人が好き。それでね、」  私は思い切って自分のありったけの気持ちを伝えようとする。  ところがその時、拓人は公園に隣接してるテニスコートの方をみていた。 「……拓人。私の話、聞いてた?」 「ん? 話、ウン、聞いてたけど。映画の話だろ」 「それは、さっき言ってたことで。今は、違う話をしてたんだけど。って、何をみてたの?」  怒り気味にそう言いテニスコートの方に目線を向けてみる。その瞬間、怒りが頂点に達した。  ――そうテニスコートには、二人の綺麗な女子がいたのである。  私はそれをみて察した。拓人は、私の話をほったらかしで、二人のプレーをみていたのだと。 「拓人、私帰るっ!」 「帰るって、このあと映画に行くんじゃなかったのか?」 「はあ……なんで、私が怒ってるか分かってる?」  そう問いかけるも拓人は状況がのみ込めないようだ。 「今、拓人は何をみてた?」 「テニスコートだけど……それが、どうしたんだ?」 「どうしたんだ、って……」  そのあとも拓人と言い合いになる。そして私たちは別れた。  それから現在――拓人とは、元々学校が違ったため逢うこともなく。連絡もとっていなかったのもあり、仲直りもできないままだ。  ――まぁ、あれはあれで別れて良かったのかと……。  そういう事があり私は、桜が咲く時季になると拓人のことを思い返してしまい憂鬱になる。故に、この桜の季節と桜が嫌いだ。  ――だから新しい彼氏ができたら待ち合わせ場所は、別の場所にしようと思っている。――――【完】
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