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 俺が第一希望としたのは地元の国立大学。野球では全くの無名だ。第二、第三希望も同じく地方の国立を並べた。 「……中乃森。高卒プロは確かに難しくなってしまったが、何もプロを諦める必要はないんだぞ? お前の実力なら名門大学でもやっていけるし、学歴が気になるなら東京の有名私立に推薦してやれる。大学でさらに力をつければ、4年後ドラフトにかかる可能性は十分あると思うが」 「違うんです、監督」 「違う?」 「新しい夢を見つけたんです」  監督が驚いたように目を剥く。まぁ、ついこの前まであんなにプロ野球に固執してたんだから当然か。 「ちなみに、どんな夢だ?」 「音楽の道に進もうと思ってます」 「音楽ぅ!?」  監督が大きく仰け反り、椅子がガタンと音を立てた。元々剥いていた目もさらに剥かれ、もはや零れ落ちそうな有様だ。俺はあははと苦笑いした。  最後の打席。応援団のあの曲を聴いた時に気が付いた。俺は今まで、あの野球アニメの主人公に勇気づけられていると思っていたけど、それと同じくらい、そのオープニング曲からも勇気を貰っていたことに。  音楽にはそういう力があるんだって、あの打席で俺は身を持って知った。だから次は俺が、音楽で人を勇気づけられたら。  甲子園が終わった後自然とそう考えるようになっていた。
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