秋の風、君の温もり

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あぁ、やっぱりそうか。 自分達は幾分か気が合う友達に過ぎなかった。 "恋人"なんて言葉、ただの音の並びであって意味なんてなかった。 「付き合ってみる?」なんて、翔太にとってその場のノリでしかなかったのだろう。 清楚系美人って女子アナみたいな人のことだろうか。 真澄は筋肉がつきにくいってだけで、誰が見ても男にしか見えない。平均身長ぴったりの背丈に骨ばった手足は、儚げ、天使、可愛いなんて言葉とは無縁だ。 真澄とはメールのやり取りなんてこの1週間、土日に2件しかしてないというのに。彼女には仕事の休憩時間にも連絡をとっているのだろうか。 顔が見れるだけでよかった。この寂しさを少しでも埋められるのなら。 あわよくば、土日も一緒に過ごせたら…なんて考えたりもしたけれど。それなのに。 翔太達がその場からいなくなっても、真澄は翔太を追いかけることはできなかった。 翔太は今日、彼女に会いに行く。 真澄が別れを告げられるのも時間の問題だろう。 何一つ行動する気にもなれず、もう用のない会社の前にぼーっと立ち尽くす。 どれくらい時間が経ったろう。 スマートフォンが着信を知らせる。 たった今目の前でみた翔太からだ。 少し躊躇して、恐る恐る電話に出る。 『もしもし?真澄?』 「あ、うん。どうしたの?」 『ずっと連絡できなくてごめんな、仕事忙しくて。』 「いや、俺も忙しかったし。大丈夫だよ。」 『…そっか。なんか元気ないけど大丈夫?』 「え、そうかな?仕事で疲れてるからかな。」 『無理するなよ。…あのさ、明日って何してる?真澄に会いたい。』 今の間はなんだろう。 会って直接振られるということか。 翔太のことを思えば、ちゃんと会って別れてやるべきだろう。いや、そもそも付き合ってたのかすら怪しいけれど。彼女がいるって翔太の口から直接聞くことになるのかもしれない。 「…ごめん。今、出張中だから明日は会えない。」 『出張…珍しいな。何処?じゃあ日曜は?遅くなって構わないから。』 「日曜日も無理。今関西方面にいるんだ。」 『そっか。分かった。…なんかあったらいつでも連絡してよ。』 「うん。俺も仕事忙しくなっちゃってさ。落ち着いたら俺から連絡する。」 数時間前まではこの声を聞きたくて、会いたくて仕方なかったというのに。 大切な人に 大好きな人に嘘をついてまで何がしたかったのだろう。
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