秋の風、君の温もり

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2人は日付が変わっても話続けた。 すれ違っていた日々を、ともに抱えていた想いを。 そして、貴方が大好きだと。 「彼女に会いに行くって、俺のところに来る予定だったの?」 「うん。会いたいって言ったでしょ。」 「言ってたけど…いつもはもっと事前に言うのにどうして?」 「それは…ずっと会えてなかったし、最近仕事忙しくて連絡もあんまりできてなかったから。」 そう言って目線を逸らされた。 照れてるようだけど、どこか歯切れが悪くて。 「他にも理由があるの?」 「…記念日。」 「…あ。」 その一言で真澄は理解した。 真澄が立ち聞きしたのは10月上旬。 真澄と翔太が出会った頃だ。 もしかして。 「真澄、記念日とか普段から意識してないだろ?俺ばっかり覚えてて…それも初めて話した記念日なんて言ったら、真澄にそんなことで?って呆れられたらと思うと言えなかった。」 「覚えていてくれてありがとう。」 ぎゅっと翔太を正面から抱きしめる。 「俺、そんなことで、なんて言わないよ。むしろ俺の方が引かれるかも。初めて一緒にお昼を食べた日、初めて2人で出かけた日、手を繋いだ日、家に遊びに行った日、泊まった日、俺にとっては翔太と過ごす日々はいつも初めてに溢れていて、毎日が記念日だった。」 「っ!!」 「俺、重いかな?」 抱きしめた腕を緩めて翔太の顔を覗き込む。 「いや、ごめ、嬉しすぎて。泣きそうかも。」 「泣かないで。俺もまた泣きたくなるから。」 そういって2人で見つめ合い、また強く抱擁する。 もう二度と感じられないと思った翔太のぬくもり。 あんな思いはもうしたくない。 「出張だって嘘ついてごめん。俺、離れることがこんなに辛いなんて思わなかった。本当はずっと寂しかった。でもお互いに忙しいって分かってたから、邪魔しちゃいけないと思って言えなかった。」 「うん。俺も寂しかったしずっと会いたかった。」 「俺はもう…翔太を失いたくない。」 「俺はずっと真澄のものだよ。」 さっきよりも強く抱きしめられる。 「寂しくなったら、連絡していい?」 「寂しくなくても連絡してよ。新幹線で会いにいく。」 「俺も、会いに行っていい?」 「真澄が会いにきてくれたらすげー嬉しい。」 こんな簡単な言葉、どうして言えずにいたのだろう。 「俺、翔太が、す、好き。」 「俺も、真澄が世界で一番大好きだ。」
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