61人が本棚に入れています
本棚に追加
---------------
--------
---
あれから5年が経った。
10月になると一気に風が冷たくなるのは今も変わらない。
「真澄ー、用意できた?」
「待って、今行く!!」
短い廊下を小走りで駆け抜けて玄関で待つ愛しい人の元へ向かう。
「翔太、お待たせ。」
今年の4月から、翔太は真澄が住む市内にある東北支社に異動になった。
それを機に、真澄と翔太の同棲が始まった。
あの日から、真澄と翔太はたくさん連絡を取り合った。
嬉しかったこと、悲しかったこと、今日食べたご飯が美味しかったこと、今日見た景色が美しかったこと。
どんなに話しても時々寂しくなって。
そんな時はたくさん会って、たくさん抱きしめあった。
でも今は隣に彼がいる。
嬉しかったこと、悲しかったことを一緒に共有できる。
美味しいねと2人で笑い合いながら食べるご飯。
綺麗だねと2人で目を輝かせながら見る景色。
もう寂しいことはひとつもない。
「んー、ちょっと薄着じゃない?大丈夫?」
「大丈夫。寒かったら翔太が暖めてくれるでしょ?」
「まぁそうだけど。」
「じゃあずっと隣で暖めてね。」
「はいはい。今日は何処に行こうか?」
2人手を繋ぎ、玄関のドアを開ける。
秋の冷たい風が2人の間を通り抜けた。
「今日は紅葉を見にいこう。」
fin
最初のコメントを投稿しよう!