秋の風、君の温もり

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--------------- -------- --- あれから5年が経った。 10月になると一気に風が冷たくなるのは今も変わらない。 「真澄ー、用意できた?」 「待って、今行く!!」 短い廊下を小走りで駆け抜けて玄関で待つ愛しい人の元へ向かう。 「翔太、お待たせ。」 今年の4月から、翔太は真澄が住む市内にある東北支社に異動になった。 それを機に、真澄と翔太の同棲が始まった。 あの日から、真澄と翔太はたくさん連絡を取り合った。 嬉しかったこと、悲しかったこと、今日食べたご飯が美味しかったこと、今日見た景色が美しかったこと。 どんなに話しても時々寂しくなって。 そんな時はたくさん会って、たくさん抱きしめあった。 でも今は隣に彼がいる。 嬉しかったこと、悲しかったことを一緒に共有できる。 美味しいねと2人で笑い合いながら食べるご飯。 綺麗だねと2人で目を輝かせながら見る景色。 もう寂しいことはひとつもない。 「んー、ちょっと薄着じゃない?大丈夫?」 「大丈夫。寒かったら翔太が暖めてくれるでしょ?」 「まぁそうだけど。」 「じゃあずっと隣で暖めてね。」 「はいはい。今日は何処に行こうか?」 2人手を繋ぎ、玄関のドアを開ける。 秋の冷たい風が2人の間を通り抜けた。 「今日は紅葉を見にいこう。」 fin
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