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佐々木は「携帯……?」と言うと、ポケットに手を入れた。
「ないですね」
俺は「そうか」と答え、途方に暮れた……。この状況をどう説明したものか悩んだ。
だが、こうなっている事実は事実だ。正直に話そう。
「佐々木、落ち着いて聞いてくれ。俺はここがどこなのか、なぜここにいるのか、全く分からない。分かるのは、俺とお前がいつの間にか眠っていて、目覚めたらこの部屋にいた、ということだ」
そう言うと佐々木は、「なんですかそれ、めっちゃ怖いじゃないですか」と言った。パニックになると思ったが、想像より遥かに冷静だった。俺はさらに言った。
「お前、目覚める前の記憶あるか? たしか俺たち、仕事帰りに二人で飲んでたよな?」
「あーはい。飲んでましたね。先輩、酒入るとどうしようもない愚痴を言い出すから大変だったんですよ。部長の愚痴なんで僕も一緒になって言うこともできないですし」
「そこは今いいだろ。それで、二人で飲んでいて、なぜ俺たちは今ここにいる?」
「それは分からないですね。でも、出られるんじゃないですか?」
「出られる?」
「ほら、そこにドアありますし」
佐々木は立ち上がると、例の扉の前まで歩いて行った。
ガチャ。
絶対に開かないだろうと思ったが、予想に反して扉は開いた。いとも簡単に開いた。
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