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「先輩、大丈夫ですか?」
「お前はなんでそんなに余裕なんだ?」
「パニックになっても仕方ないからです」
普段仕事でパニックになっているお前が言うな、と思ったが飲みこんだ。これはどうやらゲームを受け入れるしかないようだ。
さっそく俺は佐々木を絶望させようとした。
「佐々木、お前の昇進だけどな、普段から部長と話す身として言わせてもらえば、可能性は低いようだ」
佐々木は別に驚くでもなく、「ふーん」と言い、
「それは先輩もですよ」と続けた。
「どういうことだ」
「僕が前に先輩と飲んでたとき、携帯を触ってたの覚えてますか?」
「あぁ、お前がニヤニヤしてたあれだろ。彼女とメールしてるとか言ってた」
「そうそう。あれ、実は携帯のボイスレコーダー機能だったんです。先輩が部長の愚痴を言うの全部録音していましたし、全部部長に聞かせました。最近部長、先輩に攻撃的だったでしょ? そういうことです」
俺の目の前のメーターの針が、右に動き始めた。だめだ、動揺してはいけない。
しかし、メーターの針はすぐに止まった。
無事に帰られるかどうかも分からないゲームで、会社のことなんてどうでもいいと感じたからだった。
メーターの針はどんどん左へ戻っていった。
なので、俺も負けじと「ふーん」と返した。
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