絶望ゲーム

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「あーそうそう」佐々木が言った。 「なんだ」 「先輩の奥さん、綺麗ですよね」 「自慢の嫁だからな」 「大学時代に付き合っていて、そのまま結婚したんでしたっけ?」 「だからなんだ」 「前に先輩が酔ってたときに話してましたが、とても良い奥さんで、男も先輩しか知らない一途な性格だって」 「だから、それがどうした」 「奥さん、お尻にホクロありますよね。両尻に一つずつ」 「おい、お前まさか」 「先輩、ごめんなさいね」 「嘘だろ」 「先週、先輩の奥さん、友達と映画を観に行くって言ってたでしょう。日曜日。」 「……」 「僕たち関係を持ってもう一年ですよ。先輩もなんで気が付かないんですか。馬鹿ですか」 「……」 「僕たち穴兄弟ですよ、先輩」  俺はメーターの針を確認した。全く動いていない。俺は笑いが込み上げてきた。 「なにがおかしいんですか」佐々木が訝しげに言った。 「お前らの関係ぐらい知ってたよ。わざと泳がしていたんだよ。証拠のメールも、写真も、たくさんあるぞ」 「え……」佐々木が絶望したような顔になった。 「不倫の慰謝料知ってるか。三百万だよ。お前、払えるのか?」 「そんな……僕たち踊らされていたのか……」 「は?」俺は言った。 「踊らされてたのはお前だけだよマヌケ。俺は実は借金があってな。それの返済のために嫁とグルで慰謝料請求の商売やったんだ。お前から慰謝料もらったらまた嫁と戻るよ。嫁の不貞に関しては俺公認だ。借金返済のために仕方なかった」
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