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その日の夜、無気力に掃除をしていればうるさいぐらいに入店音が鳴り響く。顔も上げずにお決まりの文句を口に出せば、慌てたような足音がどんどん近づいてきた。
……ん? トイレか?
それとも何か聞きたいことでもあるのかなと顔を上げてびっくり。待ち侘びて、焦がれて、でももう来ないのだろうと諦めたひとがそこに立っていた。
「やっと会えた……」
よかったと、ホッとしたように笑う彼から目が離せない。
その視線に気づいたsuiが邪魔だと言わんばかりに帽子を取った。肩まで伸びた髪がさらりと揺れる。
じいっと胸の辺りを見つめた彼は、にいっと口角を上げた。
「春崎くん、君に会いに来たよ」
恥ずかしげもなく言われた言葉は、まるでドラマの台詞みたい。
ストレートな物言いと名前を呼ばれて、どくんと血が沸き立った。
ああ、名札を確認していたのかと心の中では冷静に察するけれど、スターを前に何を話せばいいのか分からなかった。
一番星のようにきらきらが止まらない。
彼を囲うようにして星でも散りばめられているのかっていうぐらい、全てが輝いて見える。オーラって目に見えるものなんだ、そう実感したのはこの時が初めてだった。
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