秋芽(シュウガ)と亜玖斗(アクト)の場合

1/1
前へ
/19ページ
次へ

秋芽(シュウガ)と亜玖斗(アクト)の場合

 好きの基準が、誰にでもあるなら…  俺の基準は、先ず顔。容姿。  性格は、どうでもいいと言いたいけど、妥協すると後々、痛い目に合うのは自分だと言う理由から。難有りは無いと思ってた。  ザックリ言うと、DQN的な?  悪く言うと…周りから見てもあきらかなぐらいに浮いてそうなヤツとか…  決して近付きたくない勘違い系なヤツで1人で、アワアワ騒ぐヤツとか… 後…平気で嘘付くとか、裏切るとか?  そして、もう1つ。  怪しいヤツ。  そう言う感じのヤツ。  俺自身、身長が高いだけであんまり目立つような容姿じゃない。  割りと普通で、モブっぽいが友達やら知り合いは多い。  コミュ力が、尋常じゃないぐらい高いと言われたり。  誰とでも、直ぐに仲良く出来ると言われてるのは…  「出会いだよな…いつどうやって人って出会うか、分からねぇし! 知り合いに片寄りとかあると、視野が狭くなるって言うしな」  「…そんなもん?…」  眠たそうに、気だるそうに…  日陰で涼む猫みたいに亜玖斗は、壁にもたれて軽く目を閉じている。  顔のパーツのドレを取ってもこれ以上の仕上がりが、難しい程に綺麗に整っていて…  行く先々で女でも男でも、必ず目を止める。  それこそ目を輝かせて、近寄ってくる連中もいるが……  声を掛けられて振り返った瞬間に向けられる眼光の鋭さと言うか、目付きの悪さ…  藪睨み?  ホントにシャーって、威嚇する猫そのものだ。  俺だって、最初のウチは割りと顔がタイプって思ったけど…  期限悪そう? 的な感じで声は掛けない方が、いいかもと判断してモブに徹した。  つるんでる連中は、俺とはまたタイプの違った陽キャで…  ガラこそ悪くはないが、近寄りがたい集団で…  「…亜玖斗くんってさぁ…本当は、近隣の出身らしいんだけど…色々、黒い噂があるんだって…」  「例えば?」 俺は、間の抜けた口調でクラスメイト達の話しに加わる。  「えっ…秋芽。知らねぇ? オレも噂を聞いたけど、アイツの親のどっちかの金持ちとか政治家で…亜玖斗自身は、愛人の子供で隠し子とかって話し…」  「そうそう。それを探りに来た週刊誌の記者が、出版社に契約切られたとか荷担した社員が、干されて国外の僻地な場所に飛ばされたとかやつでしょ?」  「週刊誌のネタ?」  「マジな話しな…」  「へぇ……」 圧力で、揉み消される感じの…  でも、相変わらず。  顔はいいよな。  「おーい。顔が良いからって、惚れんなよぉ~っ!」  ドキッとした。  「はぁ? 俺だって、それぐらいの見境ぐらい付くっての!」  自分が、ゲイだとか…  同性が好きだとか隠している訳じゃないから。  茶化される事は、よくあることだし。  変な目で見られるのもは、今に始まったことじゃない。  まぁ…オープンにし過ぎて、若干引かれてる場合もあるけど…  全部。  気にしない事にしている。 だってさぁ…  「…自分の秘密なんって、ホントは、聞かれたくねぇーし。バラしたり。バラされくなねぇし? 俺の場合は、バレてるけど…秘密を隠さなきゃならないなら。隠せば良いって思うよ。だって他人が、無理矢理、聞き出したり探ったりするもんじゃねぇだろ?」  俺が、何気なく発した言葉を…  あの時。  亜玖斗は、聞いていた。  話し終わりに、何気なく。  目が合ったから…  話を、聞かれていたんだと気が付いた。  それから…  話し掛けても、大丈夫か? と軽く挨拶をするようになって、少しずつ話すようになった。  最初は、策り探り。  見掛けは、綺麗だけど…  やっぱりどこか、暗い所があったり。  今までで一番、驚いたのは…  実を言うと、今日の朝のことだった。  バスケ仲間と、少しキズだらけで登校してきたことに引くと言うよりも、本気で心配した。  本人に聞けば…  「ちょっとね…」って、返ってきたけど…  話によると、広場でバスケをしていて下が砂利なために何度か転けて出来たキズだとか…  ちょっとね…のキズを、それなりに消毒はしたと言っていたけど、本当に手当されてるのか微妙な感じだった。  世話なんって、やいてもいいのか微妙な感じもしたけど…  「勿体ない…」  「…えっ…」  「綺麗な顔にキズとか、勿体ない」  亜玖斗は、少し押し黙ってから…  「…綺麗?……」  「あっ、ワリー。キモいな。でも綺麗な顔は、本当なんだから。バスケって、テレビで見るとボールと一緒に突っ込んだりするじゃん。あれって怖くねぇーの?」  俺は、たまたま持ってた絆創膏を亜玖斗の顔にあるキズに貼った。  「…どうだろう。試合中は無我夢中だし…キズとか気にしてない方が、多いかなぁ……あの…」  「ん?」  「絆創膏、ありがとう」  「うん」  練習が終わって、家に帰ってから。 鏡を見て、キズが有ることに気が付いてはいたど…  キズは、気にしないようにしていた。  小さい頃から。  弱いとこ見せたくないって思えてて、弱味に気づかれた瞬間から付け込まれるって教えられてきたから。 人を信じた事なんって、一度もなかった。  周りも、信じられるだけの信用をくれなかった。  どうせこれからも、1人なら。 他人なんって、側に置いても何にもならない。  よく言うアレだ。  どうせ人なんって、裏切るに決まっているし。  自分にとって必要なことは、大体1人で考えてきた僕にとって…  人に取り入るとか、人に相談するとか…  どうやって話していいかも、全く分からなかった。  そんな状態で、よく生きてこれたと思う。  生意気にも、信じられるのは、自分だけだって節があったり。  気を抜くと変なヤツら ( 特に記者?) に目を付けられるしで、気を張ってないと自分自身もが、無関心な親に迷惑を掛かる。  まぁ…親に迷惑掛けたところで、何かが、変わるとかないし。  簡単に後処理してくれる力…って言うのか?  そう言う最強の盾ってのを、振りかざされていたから。そこは、恩みたいなモノを感じるけど…  実際は、お高い地位の自分達の生活を守るためだし。  僕は、その中でもどうだっていい存在で、それぐらいの方が、僕にとっては生きやすかった。  そんな僕に秋芽は、挨拶と言う名の声を掛けてきた。  最初は、無視した。  大抵はそれで、声なんって掛けてこなくなるから。  なのに…  秋芽は、違った。  懲りずに何度も、声を掛けてきてくれた。  人懐っこいとは、また違って…  気さくに普通に…  どこかの大人達とは違い。  別に何かを、企む素振りもしない。  その頃。  偶然僕は、秋芽が別な学校の男子と付き合っているらしいとの話を耳にした。  そしてその後、直ぐに他校の男子と仲良さげに歩いている秋芽の姿を見掛けてしまった。  『…自分の秘密なんって、ホントは、聞かれたくねぇーし。バラしたり。バラされくなねぇし? 俺の場合は、バレてるけど…秘密を隠さなきゃならないなら。隠せば良いって思うよ。だって他人が、無理矢理、聞き出したり探ったりするもんじゃねぇだろ?』  『そうだね』  仲の良さそうな男友達って言うよりも、凄く2人の距離感が近い。  寄り添ってるように見える。  あっ…  そう言う事なんだ…  噂では、聞いていた。  まぁ…  だからって言って…  気持ち悪いとか、そう言う嫌悪感って言うのは、感じなかった。  僕自身や周りを考えれば、異常なのは僕の方で、指摘されるよりも明らかだった。  何よりも、あんな風にお互いに笑いあえたりする日常が、心底羨ましいとさえ思えた。  人って…  友達や知り合いに向ける笑顔とは別に、自分にとっての特別な人に対して、あんなにも嬉しそうに笑えるんだと知った衝撃は何気にキツかった。  そして、あの笑顔が欲しいと思ってしまったんだ。  欲張り?  違う。  ほしい?  …とも少し違う。  いつの間にか教室で、声を掛けてくれるのを、待つようになった。  どんなヤツらに、笑顔を向けられても…  その笑顔とは違う。  あの柔らかい笑顔じゃなきゃダメなんだと…  思いが、強くなった。  何だろう…  この気持ちは?  もしかして…  これが、欲?  あぁ…そうか…  欲張りも、欲しいも同じだなんだ。  それから。  また少ししてから……か?  秋芽が、その他校のヤツに振られたとか、聞いたの…  良かったと、心底ホッとした。  …って、良かった。  何が?  別れたことに僕は、ホッとしているのか?  何で?  それが、好きって意味なのか、まだ分からなくて無意識に僕にも、あんな風に柔らかく笑ってもらいたいって欲を、改めて感じた。  僕にだけ笑ってくれないかな…って、本気で思ってたし。  そう願った。  その辺りからだったと思う。  人知れず。  秋芽を、気にし出すようになったのは、ただ僕と秋芽は同じ学校で同じ学年だけど…  全てに置いて違うって言うか、接点が無さすぎた。  まぁ…接点、云々の前に難有りなこの性格。  無愛想。  カーッとなりやすいなど…  おそらく気の利かない親族達からの自衛で培ったものが、邪魔をしてきて素直さが、足りないとか自業自得過ぎて呆れた。  それに秋芽が、最初声を掛けてくれた理由が、この顔だからって言うのは知っていたけど、他人からあからさまに指摘されたりするのは、ムカついた。  あぁ…僕の取り柄は、この顔だけ… そうでもなければ、秋芽が声を掛けてくれる事も、なかったはずだ。  普通に腹が立ったし。  お前らが、指摘すんな!  ふざけんなとも思った。  お前も、一緒なのかよって…  だから。  最初の頃は、不貞腐れてた。  でもそれが、お互いを知る手立てだったのもホントで…  誰よりも、優位に立ちたくて、この顔で近寄った。  優位に立てる自信はあったから。  挨拶されたら。  挨拶を、返せばいい。  最初はそれだけを、繰り返そうと注意深くなった。  さて…  この顔で本当に釣れるかな?  大きな賭けだった。  試合の相手チームを、どう崩すかと考えるよりも、難しかった。  それは、もしかしたら。  秋芽の方も、同じだったのかも知れない。  それからは、当たり前のように話す様になってクラスの連中と遊んだり。  何かの拍子で、2人で出掛けるってなったときは、人知れず興奮して気持ち的に舞い上がっていた。  ヤロー同士で出掛けるのは、僕的に言えば普通の事だったけど…  秋芽にとっては、どう言う気持ちだったのか…  ただの遊び友達との気晴らしか、気になるヤツとの疑似デートか…  僕には、分かりかねないけど…  ずっとこっちが、勘違いしそうになるような柔らかい笑顔を、僕に向けてくれていた。  その柔らかさは、未だに続いていて…  このまま勘違いを続けていいのか、それとも正直に好かれていると思っていいのか、ハッキリ言って迷っていると言うか、悩んでいる。  直接、聞くか?  いやいや。  そんな度胸…  ねぇーし。  だから。  さっきから壁に寄りかかって、項垂れてる。  「…亜玖斗! 聞いてる?」  「……ん?………」  ボケっとした亜玖斗の顔が、酷く慌てた様にも見えた。  「って、なに?」  俺は、呼び出された理由を探す。  こちらの気持ち的に言えば、近くに居たいからついてきたとは、言える訳もなく。  亜玖斗が、自分から少し話そうって言ってきたけど…  何の用だろう?  この間、遊んだばっかだし。  映画も…見たばっかりで、互いに見たい映画の新作公開は、まだ先だ。  それにしても、どっからどう見ても、綺麗な顔してる。  キラキラして見えるのは、俺ビジョンだからか?  あぁ…  告白してぇーっ !!  アレ?  でも亜玖斗は、俺がゲイだって知ってるのか?  知らずに、告白したら引かねぇ?  いや…  引くよな?  困るよな?  「……~がっ?」  「…………」  「秋芽どうしたの?」  「へっ…」  焦った。  呼ぶ声の方に顔を向けると、亜玖斗の顔が近くにあって…  かなり仰け反った。  「なに? どうかした?」  何度も見ても、見飽きない。  綺麗な顔立ち。  好きになるなって、言う方に無理がある。  どこまで、顔を近付けたら顔を反らすかな?  そんな考えが、浮かんだ。  頭では、分かっている。  でも、身体が勝手に動く。  掴んだ腕は、離したくない。  亜玖斗が、俺の目から視線を反らさない限り。  近付けるならと、鼻先まで近付けた感覚で言えば亜玖斗は、逃げなかった。  逃げてくれれば、嘘で済むかもなのに…  このまま逃げないのならと、その動きを止めるようにキスした。 唇の感触は思っていたよりも、柔らかくて…  クラっと、目眩を起こしそうになる。  本当に人間の欲って…  コエーッなぁ…  止まらないって風でもないけど、高ぶり出す前の気持ちは、なるようになってしまえだ。  欲のまま。  亜玖斗を、独占したくて…  もう一度キスをする。  バランスを崩して、踊場の壁に押さえ込む形になってしまった。  そうやって突然、キスされて…  「…嫌なら。殴っていいよ…」  そう囁かれた息みたいな声は、一瞬で身体を熱くした。  申し訳なさそうな秋芽の口元とサラリたした髪が、西日に反射して…  その横顔にドキッとして、思わず見惚れた。  顔は多分。  赤くもあり。  熱かった。  どうしていいか分からなくて、おかしくなるぐらいドキドキする胸に手を置きながら。  心配げに見詰めてくる秋芽の表情を見詰め返した。  いつも通りの柔らかくて優しい顔。 重なった唇同士が熱くて、溶けそうな感覚に自分の気持ちをどこに持っていけばいいのか、戸惑っている。  勿論。  嫌だとか、そう言う感情はなくて… やっぱり嬉しいとさえ思っている自分が居た。  そう言えば、クラスの女子が言ってたっけ。  “ アイツが、アンタに惚れてるか、どうかは置いといて…アンタみたいな顔のヤツが、好きなんだと思うよ ”  その言葉を、覚えていたから。  なんだか妙に納得してしまった。  「…あの…用事が、有るから…」 かなりテンパってた。  「何で? 避けなかったの?」 そう言うこと、真顔で聞くか? ったく。  「亜玖斗?」  「そんな事…聞くかよ。普通 !! 察しろ。アホ!」  「へぇ……?」  秋芽の身体を押し避けるように西日で、オレンジ色が眩しい屋上に通じる階段を、一気に掛け降りたせいのドキドキか、キスされた事へのドキドキか… 分からない程に息苦しかった。  滅多なことじゃ息なんって、上がったこともないのに…  そっか、息が上がってるんじゃなくて動揺してるんだ…  秋芽と居ると、物凄く落ち着く。  こんな僕でも、温かくなれて居心地が良くて、いつも長く居てしまう。  でも、どんなに近くに居ても、 側に居ても、秋芽と僕は付き合っていない。  ただ。  一緒に居る事が多い。  好きだから一緒に居るのか…  友達として、割り切れる事なのか…  本当に僕を、好きなのか、  いや…  キスしてくるぐらいだから。  好きなのかなぁ…  そうなると僕は、どうなんだろ?  ドコまで秋芽を好きなのか、分からない。  同じ好きなのか?  いつからか、あの居心地の良さに甘えたくなった…  明るくて話しやすい雰囲気の秋芽は、人気とか人望って言うのかなぁ…  コミュ力高いのも、魅力の1つで容姿は、自分から平凡だとか言うけど、あの身長なら秋芽の方が高いし羨ましい。  サッパリとした性格だし。  僕みたいな得体の知れない顔だけのヤツよりも、よっぽどましだと思う。  最終的にモテるのは、秋芽みたいなヤツだよ。  で…僕は、その人に…  キスされた。  それも、2回も。  告白されてもない状態で、キス?  えっ…と、これは、  怒った方が、良かったのか?  嫌なら殴ってくれ、みたいなこと言われたけど…  秋芽のことは、嫌じゃないから。  どうすれば、良かったとか考えると胸がザワザワする。  いや…でも…  あっ……これが、好きって事か…  僕は、秋芽が好きなんだね。  何もかもが、初めてな感覚で僕にとっては、今までの照れくさかったことを、色々と思い出してしまい。  再び、顔が熱を帯び始める。  どうしよう。  心臓がバクバクして、ちっとも落ち着かない。  学校も、放課後ってこともあり少しうるさいような気もするけど…  まぁいい…  息を整え壁にもたれる僕の耳にバタバタと掛けてくる足音が、響いた。  「 亜玖斗! 良かったまだ帰ってなくて !!」  突然、名前を呼ばれ我に返るように振り向くと、バスケの練習で無理をするタイプのために生傷が絶えた事がない友達が、声を張り上げていた。  同学年で、バスケ部とは違って独自の愛好会と言う特殊なチームを作って、学校の内外で活躍している1人だ。  僕は、部外者だけど…  何って言うか…  運動神経だけを、宛にされた予備の援軍に近い…  このチームには、揃えられたユニホーム類は、無いから学校指定のジャージだったり普段着に近いジャージを着て他校や一般の人達に混じり対戦をしている。  確か先輩達が、この間、他校のバスケ部内で作ったチームとの試合を中庭のコートでするから早く申請が、通らないかってブツブツ言ってたなぁ… で、許可が下りたんだ。  「えっ! てか、亜玖斗なんでヨレヨレ?」  「色々…あって…で。何?」(疲)  「今、亜玖斗は、時間大丈夫だったりする?」  夕飯の買い物には、まだ時間があるから大丈夫だけど…  「うん。少しなら…」  「良かった。メンバーの人が昼休みにケガして試合に出れなくて…」  ん? いやいや。  他にメンバー10人位居なかった?  「どうしても、勝ちたい相手なんだって! 頼むよ!」  元々、どの部活にも属してないからなぁ…  暇って言えば、暇だけど…  「ね!頼む。1試合だけでいいから」  ここまで、頼み込まれると断れない。  「分かった。1試合だけなら」  その頃、屋上の階段では、取り残された屋上に通じる階段の踊場で、1人身悶えていた俺が居た。  俺…やっちまった。  ってか、亜玖斗も避けろよ!  逃げろよ!  いくら亜玖斗でも、殴られたくねぇーけど…  殴られても、仕方がないことしたんだよ俺は !!  ……その前に告ってないのに、すんっなって…話しだけど…  でも、あんな風になったら止められる分けねぇーじゃん!  俺は、亜玖斗が好きなんだ。  特別なんだよ。  って、分かっているのに…  ヤバい。  どうする?  …ここまで、やらかすとは、考えてなかった。  今までにも、付き合ってきたヤツもいたし不意打ち的なぁ~~のは…  まぁ~っ…あったけど…  それは、付き合って居たからで…  今のは、不味い。  非常にか・な・り不味い。  こんな事すっから。  俺は、遊んでいそうとか言われんだよ !!  付き合ってもない相手に、不意打ちキス ( 図に乗って2回 ) は、ヤバい。  しかも2回目は、壁に押し付けたみたいになってる。舌を入れなかったとはいえ。  さすがに…  これは、事故やゴメンで済まねぇーだろ?  落ち着いて考えれば、考える程。  自己嫌悪と言うか、何してんだよって、自分で自分を殴りたくなる。  これが、惚れた側の弱みなら俺は、相当なアホだ…  ガックリと肩を落とし階段を降り始める。  すると、下の方から男女の話し声が聞こえてきた。  「なっ! ここに居たしょ」  「本当だわ。って、何か落ち込んでない?」  この二人は、一応俺と亜玖斗のクラスメイトで、俺とは同じ中学からの友達としての付き合いも、それなりに長い。  二人ともいち早く俺の恋愛観? を理解してくれた以降は、助言やら苦言やら説教をしてくれる有難い存在達だ。  「で、どうしたのよ? デカイ図体のヤツがトボトボと…キショい」  俺は、鈍よりとした顔を上げる。  「本当にどうした? この世の終わりみたいな顔してさぁ…」  「やらかした…」  「何を?」  二人は、俺を挟むように立つ。  「…その亜久斗に…キスした」  そんなカミングアウトに二人は、顔を見合わせた。  「えっ、キスだけで、止められたの?」  「おーっ! 節操無いお前にしては、珍しいじゃん」  節操無いって……  「人をケダモノのように言うな!」  「顔と容姿が好みなら。取り敢えず付き合っちゃえ、ヤっちゃえって言うなようなアンタにしては、ってことよ」  「それとも、その場の流れに乗っかって…とか動物並みの本能とでも、言うのか?」  その場の流れは、かなり責任を感じている。  でも、動物並みの本能って俺のキャラ設定は、やっぱりヤバいのか?  「なぁ…秋芽。落ち込む程、大事な獲物=亜玖斗なら。もっと大事にしろよ。逃すなよ」  獲物って…  俺に対して、何かこう悪意が込められてるような気配が…  「いや…だから。俺は、亜久斗と真面目に付き合いたいんだよ。けど、俺ずっとこんなんだったし…どう告るのか、付き合うとか、分かんなくて…いつも流れで、何となく付き合ってきたみたいな…出会いばっかでさぁ…」  「…それは、アンタが遊び慣れしてそうな軽そうなイメージだからで、相手もそんな付き合いを求めているからよ。次いでにアンタのカレシが、途切れないのは、決してモテるとかじゃなくて…チャラいからよ。分かった?…モテとチャラそうは違うのよ」  「………ちょ…えっ……」  「何に対して、衝撃受けてんの?」  「あの…さぁ、俺、亜玖斗が好きだって自覚してから。他の誰とも、付き合ってもねえーし。そねシてねぇーから」  「えっ…マジ? 半年間もか!」  「じゃ…噂の年上カレシと甘々な年下カレシ達の同時進行とは、スッパリと別れてたのね」  「最初少し被っていたけど、同時進行じゃねぇーよ !!」  二人は、声を揃えて元カレ達の話しを蒸し返す。  そう言うのがあるから。  信用ないのか…  俺は、恋愛そのものが、その場の勢いとかそんな感じで今までで来たから。  本気の好きを、どう扱っていいのか分からない。  「なるほどね」  放課後に恋愛相談なんって、今までの俺とは、思えない。  「中学からの仲だけど、やっとお前、改心したんだな。もう取っ替え引っ替えと来るもの拒まずも、止めろよマジで!」  「恋とか愛の力って、偉大ね…で ? 亜久斗くんは、アンタにとってどう言う存在なわけ」  「…大事だよ。何か終始一緒に居るからか、俺と付き合ってるらしいとか噂話になってるとか、聞くけど、まだ付き合ってねぇーし。俺と違って亜玖斗は、そんな軽いヤツじゃない」  亜玖斗の事は、大事にしたい。  側に居てほしい…  それは、嘘じゃない。  「うっわぁ~っちょっと、最低な男が、急にピュア化したわよ!」  「良かった。良かった!」  うん。  何を真剣に言っても、悪意にしか聞こえん。  まぁ…  スミマセンね。  今まで、異常恋愛してて…  「で、何しに来たんだよ。俺の恋愛相談しに来たわけじゃないだろ?」  二人の目が、ランランと輝く。  「そうそう、俺らが来たのは」  「そっ! 亜玖斗くん。今助っ人でバスケの試合に出てるの !!」  間近で見ようと、階段を掛け降りようとする俺に…  「行っても無駄。遠目でしか見えんしギャラリーっての? 居すぎて近付けねぇよ」  「へっ?」  「だから。屋上に来たのよ…」  「確かに、ここからの方が、試合もよく見えそうだな」  「我が校の特等席よね」  「……………」  何って言うか、亜玖斗は黙って居れば美形キャラだ。  無口って程でもないけど、微動だにせず黙って居ればモテそうだ。  本当に…  目付きが、  たまに…  異様に…  かなり…  悪い時がある。  何気なく呼び止めた同級生が、振り返り様の亜玖斗と目が合い。  その眼光の鋭さからかフリーズしたと言う。  校舎に面した中庭のコートには、バスケ愛好会なのか、スポーツ愛好会的なクラブなのか…  連中が設置したバスケットゴールがある。  そこで愛好会のメンバーは、他校にある似たような連中を呼び試合をしていると言う訳だ。  「どこだ?」  「アレよ。1人制服で、シャツの子」  パスされたボールを受け取り、相手の動きを素早くかわす度、沸き起こる歓声。  フェイントを掛けながら振り返り。  高くこうを画くように放たれたボールは…  真っ直ぐにゴールへと吸い込まれ。  本日一番の歓声が、沸き起こる。  「やっぱり。カッケーな亜玖斗」  「そうね」  周りのコートを取り囲む女子の悲鳴にも似た大歓声に少し?  いや、かなりイラついた。  「俺も、キャー。キャー。言いたい。言えるものなら。今ここで叫びてぇ…」  「珍しく重症だな…」  「秋芽が、触りた過ぎる欲求で、キスして厚かましく壁に押し付けちゃったぐらいだものね。まぁ…素行は悪くはないけど、色々噂が絶えない子って感じだけど、スポーツは見ての通りの万能型、走っても速いし。俊敏で無駄のない動きと、あの顔あの容姿…そりゃキャーッ。キャーッ。言われるわよね」  誰かが、亜玖斗を見ているって思うだけで、このイラつき。  よくさぁ…  見てるだけで、気持ちの奥がザワ付くとか…  ずっと落ち着かないとか、  自分でも気付いていないうちに目で追うとか、  それこそ…っな話しあるかって、バカにしてた…  でも、亜久斗を見てると何か全然、落ち着かなくて、姿が見えなくなると、つい目で捜してる。  アイツを通して俺の方が、バカだったと思い知らされた。  笛の音で、試合が終わり。亜久斗のチームが勝ったと、偉い騒ぎとなった。  特に女子達の悲鳴混じりの歓声は、聞いていて耳が痛い。  やっぱりそれだけ亜玖斗は、モテるって事だ。  しばらく即席のチームメイト達と喜んだ後、亜久斗は、俺の居る屋上を見上げて、何気にフンワリと笑み軽く手を振った。  無自覚に柔らかく…  気付いてたのかと言う気持ちよりも、アイツが勝った事の方が嬉しくて、つい俺も手を軽く振り替えしてしまった。  いわゆる。  こちらも無自覚に…  あぁ、良かった。  あの顔は、怒ってないみたいだ。  アイツの性格上。  仮に怒ってたら笑って、手を振ってくれるはずがない。  そう思えるのは、俺の驕りかな?  「…なぁ…」  「ん?」  「何か、一瞬にして視線が集まってない! アンタに……」  「えっ…?」  何かのスポーツの歓声か? と言う程の地の底から沸き上がる歓声が、校舎内を驚愕さる。  「スッゴ、こんな歓喜な悲鳴、初めて聞いたかも?(笑)」  「まぁ…中には、アンタと亜玖斗くんの噂も有る中でのこの流れよ。やっぱりって、感じよね」  「挨拶されたら。挨拶を、返すだろ?」  「律儀なバカね…」  「はぁ ?!」  「良い? 校内一のチャラなモブ男と校内一美形で、スポーツ万能で親が大物かもと噂の亜玖斗くん。付き合って居るんじゃないのか的な話が、あるけど…微妙な距離感で…この手の話が好きって連中は、これだけで、飯が食えるわ! 歓喜なる悲鳴よ。まぁ…中には亜玖斗くんを、取らないでぇ〜っ、的な悲鳴もあるんだろうけど…」  「このチャラなモブ男の最低ヤロー。私達の亜久斗くんを取らないでぇ~っか? 敵の数も半端なそうだなぁ~っ」(笑)  「ってか、好きなヤツに手を振られたから。振り替えしただけど…」  「ねぇ~。アンタら付き合っちゃえば?」  「簡単に言うな !!」  って、鳴り止まねぇーな。  この歓声。  って、亜玖斗は大丈夫か?  アイツこう言う感じ苦手じゃ…  手摺から身を乗り出すと、フリーズしかけで、今にもキョどりそうなアイツが居た。 続く。  
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加