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1、僕とキヨ
僕は、親友の水沢潔のことが大好きだ。
頭が良くて、スポーツ全般が得意で、話も面白いからクラスの人気者で……なにより、見た目がすごく格好良い。格好良いというか、美形。
そんな潔ことキヨは、僕に対してすごく優しい。基本的には誰にでも優しいんだけど、ほかの誰よりも大事にされているのが自覚できるくらい、僕はキヨに贔屓されていた。
それは、何のとりえもない僕のささやかな自慢でもあった。
なのに、いつからだろう。
『おはよう、ミチオ』
『数学の課題ちゃんとやった?ミチオ』
『お弁当美味しいね、ミチオ』
『部活に行こうよ、ミチオ』
『帰ろう、ミチオ』
『おやすみ、ミチオ』
ミチオ、ミチオ、ミチオ――
おはようからおやすみまで、優しく僕の名前を呼んでくれるその声にゾッとするようになったのは。
僕を見つめる優しいまなざしが、なんだか怖いと感じるようになったのは……。
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