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10、小さなショック
ただの友達――しかも同性の相手に、普通ここまで過保護になるものだろうか、とか。些細な隠し事をしていただけで、そこまでショックを受けるのだろうか、とか。
今までキヨに優しくされるたび僕は単純に嬉しかったけど、キヨは、本当は――……
「……ミチオ? まだ怒ってるの?」
「え……ううん! ちょっと衝撃的だったっていうか……でも冗談、なんだよね?」
「当たり前。っていうか俺だって同じくらい衝撃的だったよ! あのときのミチオに好きな子がいたなんてさ! なんで俺にも教えてくれなかったの? 知ってたら協力してあげることだってできたのに……あっ、」
「どうしたの?」
キヨが何かを思い出したようで、いきなり話の途中で真顔になった。キヨにしては、とても珍しい仕草だ。
「……ごめん、ミチオ」
「え、何が?」
「そういえば谷山さんって、卒業式の後に俺に告白してきたんだよね……」
別に今もあの子を好きなわけじゃない――はずなんだけど、キヨが言ったことはまた頭を殴られたような衝撃だった。
「すっかり忘れてたよ。いやだって谷山さんの他にも卒業式に俺に告白してきた女子ってかなりいたからさ。――って、なんか自慢みたいだな。でもミチオはこれが自慢じゃないって分かってくれるよね? でもごめん、言っちゃって……もう彼女のこと好きじゃないなら時効だよね?」
「う、うん」
確かにあの日、キヨは僕と帰ろうとしてくれたんだけど沢山の女子に呼び止められてなかなか家に帰して貰えなかった。それで僕も同じく待ちぼうけを食らったからよく覚えている。
一人で帰ればよかったんだけど、キヨが『待ってて』って言うから、僕は素直に何時間もぼんやりと待っていた。
「そっか、そうだったんだ……」
「あの日は本当に大変だったな。色んなものむしりとられてさ……女子がみんな追い剥ぎみたいだった」
でも、ショックを受けている自分が可笑しい。
女子はみんな……谷山さんも含めて、僕みたいなチビの根暗野郎よりもキヨみたいにカッコよくて優しい男子が好きに決まってる。
そんなの、当たり前なのに。
「ミチオ……ショック受けてる?」
「すこしだけ。……でも、やっぱりあのときキヨに相談しなくて良かったよ。だってキヨ、谷山さんから告白された時に僕の気持ちを知ってたら、板挟みになって苦しんだよね?」
「ミチオ……」
優しいキヨは、谷山さん告白されたことは僕に伝えずに一人で思いつめたかもしれない。
僕のせいでキヨがそんな想いをするのは絶対に嫌だから、やっぱり言わなくて正解だったんだと思えた。
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