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12、鑑賞会
僕はなかなか、その映像を直視できなかった。
内容は、セーラー服を着た女の人――どう見ても学生には見えない大人――がベッドに座っていて、カメラに向かって自己紹介をしたあと、どこからともなく現れた男と致す、というものだったけど。
「ミチオ、ちゃんと見なよー」
「無理! ほんっとにむり!」
僕はコトが始まった途端、目を瞑って両手で耳を塞いでしまっていた。
男が女の人の服を脱がせたり、気持ち悪くてうすら寒いことを言ってるところまでは指の間からなんとか見れていたけど……。
「大丈夫だよ、なんか思ってたよりも全然凄くないからさ」
「……ほんとに?」
キヨの声にそっと目を開けたら、いきなりあられもない姿で喘ぎまくっている女の人と、前後に激しく揺れる男の尻が僕の視界に飛び込んできた。
「う、うわぁああっ!」
「……まあ、内容は普通ってとこ?」
「どこが普通なの!?」
「AVとしては、だよ」
キヨは自分の膝に肘を付いて、涼しい顔をして画面を見つめている。まるで退屈な映画でも観ているような面持ちだ。
一方、僕は。
(ど……どうしよう……)
一瞬だけ聞いてしまった女の人の甲高い喘ぎ声がやけに耳に残り、それとうっかり見てしまった映像も僕の股間に直撃して――まあ端的に言うと、勃起してしまったのだ。
僕だけこんなふうになってるなんて、キヨにバレたら恥ずかしすぎて死ねる。というか、僕は何故こういう状況になることを予測していなかったんだろう。エッチな映像なんか見れば、免疫がない僕がこうなるのは最初から分かりきっていたことなのに。
キヨは、まさか僕が平気だと思ってこんなものを見せてるのだろうか?
「っ……」
だんだん耐えきれなくなってきた僕は、膝と膝をこすり合わせるような動きをしてしまった。
こういう時、どうしたらいいんだろう? さりげなく『ちょっとトイレに行ってくるね』とか言えばいいのだろうか? でもそうしたら勃起しているのがバレてしまう。
ほんとに、どうしよう……。
なんとか他のことを考えて鎮めようと思っても、焦って余計に鎮まらない。このままではパンツに染みができるし、下手したら制服のズボンまで汚れてしまう。そんなのはもっと恥ずかしい。
もう嫌だ、なんで僕がこんな目に。キヨ、助けてよ……!
でも、僕をこんな情けない目に合わせているのは他でもないキヨだった……ああ、どうしよう。アソコがすごく腫れてるのに抑えつけられていて痛い。思いっきり擦って射精したい。
「……オナニーしてもいいんだよ、ミチオ」
「え?」
「勃起して辛いんだろ? いいよ、ここでしても。我慢しないで」
「っ……!」
キヨに、バレていた。
思わず馬鹿正直に目線を下にやると、僕の股間は思いっきりテントを張ったように盛り上がっていた。
両手は耳を塞いでいたし、クッション等で隠してもいない。それに加えてすぐ隣でおかしな動きをしていれば、バレるに決まっている。
「うぅ……」
情けなさと恥ずかしさが同時に僕に襲いかかり、じわりと涙が浮かんできた。
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