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4、事実
中学の入学当初も一時期言われていたことだけど、地味で根暗な僕がキヨの隣にいるのは至極不釣り合いらしい。高校に入学したときも色んな人に言われた。特に女子から。
『何であんな根暗そうな奴が水沢君の親友なの?』
『釣り合わないよねー、暗くてキモいし、目障りだからマジでどっか行ってほしい! 水沢君単体なら画になるのにな~。それか、誰かイケメンが友達になったらいいのに!』
たまにだけど、男子にも。
『お前が横にいると俺たちが水沢と仲良くなれないんだよ! 幼なじみだかなんだか知んねーけど、少しは遠慮しろよな!』
などなど……。
けれど、僕にそんなことを言う人達はいつも突然いなくなった。理由は分からないけど、気づけばキヨは『根暗な奴にも分け隔てなく接する性格もいいイケメン』としてますます株を上げているのだった。
そしてキヨは僕にこう言うんだ。
『こんなに可愛いミチオの悪口を言うなんて、本当に信じられないよね。ミチオ、誰に何を言われても気にしたらだめだよ』
『う、うん……まあ可愛くはないけどね』
僕は、悪口を言われることに対してはあまりダメージを受けていなかった。だって僕が言われたことは全部事実だから。
美形で頭も良くてスポーツ万能なキヨと、地味でチビで根暗な僕がつり合わないのなんか、自分が一番よく分かっているんだ。
分かっているけど……。
『ミチオのことは俺が守ってあげるから。また誰かに何か言われたらすぐ俺に教えて』
『うん……』
僕は自分からキヨと距離を置くなんてことはしない、というより出来ない。
それはきっと、僕はキヨ以外に友達が作れないということが自分で分かっているからだ。
キヨと離れて、一人ぼっちになりたくないんだ。僕はキヨに心底甘えている。依存していると言ってもいいくらいに。
このままじゃいけないということは、分かっているけど……。
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