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6、キヨの部屋にて
僕達はベッドに一人分の距離を空けて並んで腰掛けた。
家族以外にベッドに座られるのは嫌じゃないのか聞いた時、キヨは『ミチオならいいよ』って言ってくれたから、キヨの部屋に来た時はいつもそうやって座ることにしている。
キヨは僕のことを家族みたいに思ってくれてるのかなって、嬉しいのもあった。
「ミチオが俺の部屋に来るのっていつぶりかな?」
「去年の秋……とかかな? 覚えてないや」
「そっか、そんな久しぶりなんだ」
なんだかお香を焚いたみたいな、不思議な匂いがする。女の子が好きそうな甘い香りだ。もしかするとキヨには彼女がいるのかもしれない。
いや、あんなにモテるんだからいるに決まってる。僕がその存在を知らないだけだろう。
なんだか急に、キヨが遠くに行ったような気がした。 そう言ったらキヨは僕を笑うだろうか。
「ねえミチオ、DVD見よっか」
「え? 変なやつは見ないよ」
「そう言わないで。こないだ兄貴から貰ったすごいのがあるんだ。鑑賞会しようよ」
キヨには三つ年の離れたお兄さんがいる。毅くんは大学生で、滅多に会うことはないけど。偶然会ったら会釈するくらいかな?
毅くん、そういうDVD観てキヨに貸したりするんだ……いや、僕より大人だし、男だから当たり前かもしれないけど……知り合いのそういう事情って、なんか知るとむずむずする。
僕はため息をついて、キヨに言った。
「キヨ、部活の前も言ったけど、僕がそういうの苦手だって知ってるよね?」
もしかしてあれ、冗談じゃなかったの?
「でもミチオ、AVとか見たことないだろ?」
「無いけど……」
「興味ないの? 俺たちもう高二だよ、AVの一本や二本、見てて当たり前だって」
え、ええ!?
なんかキヨが、キヨらしくないこと言ってる。
「僕、そういう欲求はサッカーで発散できてるからいい、大丈夫」
「え、じゃあミチオはオナニーもしないの?」
「オッ……!? もうキヨ! そういう話はやめてよ! 僕、下ネタは本気で苦手なんだってば!」
「俺は真剣に話してるんだけど。ねえミチオ、オナニーしたことないの?」
いつの間にか、僕らの間にあった一人分の距離は詰められていた。いくらキヨが親友だからって、なんでこんな恥ずかしいこと――シモ事情を真剣に話さないといけないんだろう……。
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