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殿山海斗は、教室の窓から穏やかな昼休みの校庭を眺めていた。平静を装っているものの、心臓はロックミュージックのドラム並みに弾み、連打されるシンバルのように鼻息が荒くなっていく。
あぁ、ヤバイ。緊急事態だ。自分から招いたこととはいえ、この後に起こるであろう事態に俺は対応出来るだろうか。
その時、校庭横の渡り廊下を猛スピードで走って来る人物が目に入った。ポニーテールとスカートが爽やかに大きく揺れ、しかし険しい形相をした女子を海斗は直視出来なかった。
さすが陸上部員。普通の女子生徒よりかなり時間を短縮してここまでたどり着くだろう。
海斗は力なくゆっくりと窓から離れると、すぐ横にあった掃除用具のロッカーを開いて中へ入ろうとする。
その妙な動きに気付いた淳太が、読んでいた漫画本から顔を上げると怪訝な表情を浮かべた。
「何やってんの?」
「うん……いいんだ。俺に何があっても気にしないでくれ。あぁそうだ、俺の亡骸は陸上部の女子更衣室の外にでも埋めてくれ」
「お前これから討ち死にでもすんの? しかも陸上部の更衣室って、お前本当に好きだよなぁ」
海斗がロッカーの中に身を隠すのとほぼ同時に、教室の後方のドアが勢いよく開けられた。
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