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 海斗と詩音は同じ中学出身の仲間だった。会えばお喋りをするし、みんなで学校帰りにファストフード店に寄って他愛もない時間を過ごす。  しかし三ヶ月前にその関係が変わる事件が起きた。普段は弁当持参で学校に来る詩音が、母親が寝坊したという理由で購買で昼食を買うことになったのだ。  毎日購買に通い詰める海斗にとっては、パン屋の販売員である爽やかイケメンの佐藤さん(二十代半ば)が女子に囲まれる光景など、日常であり見飽きるほどだった。  だが詩音にとっては佐藤さんの笑顔がキラキラと輝いて見えたのだろう。一瞬で佐藤さんの虜になってしまった彼女は、とりあえず常連である海斗に情報収集を頼んだのだ。  なんで俺がと不満に思いながらも、英語の宿題を肩代わりしてくれるというのでつい引き受けてしまったのだ。  なんであんなこと引き受けちゃったのかなーー海斗は取り返しのつかないことをしてしまった過去を振り返りながら、キリキリ痛む胃を押さえながら深いため息をつく。  今になって思えば、あの日の選択こそが全ての始まり。佐藤さんの調査を始めてすぐに、とんでもない事実を知ってしまったのだ。 「海斗君にだから言うけど、実は先週彼女が出来たんだよね。恥ずかしいから内緒だよ」  嬉しそうに打ち明けてくれた佐藤さんだったが、海斗は途端に地獄に突き落とされた。 「ま、マジっすか。おめでとうございます」  なんて言ったけど、内心は詩音にどう説明したらいいのかわからずに冷や汗と焦りがが止まらなくなった。
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