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 教室の窓から陸上部の練習に励む詩音を見ながら、彼女を傷付けずに伝える方法を模索していく。  軽く『彼女いるんだってさ。残念だったな』とか言ってみるか? それともわざとデート現場に遭遇するように詩音を連れて行くか……って、佐藤さんの予定なんか知らないしーー考えては頭を抱えてしまう。  短距離走の選手である詩音がスタート地点に立つのが見えた。真剣な眼差しで前を見つめる表情に、普段とのギャップを感じてドキッとしてしまう。走り出した彼女の身のこなしと、揺れるポニーテール、ゴールをした後に見せた気が緩んだような顔に、海斗の心拍数が上がっていく。  あれっ、なんだこの感じ。こんなのっていつも見てる風景と一緒だろ? なのにどうしてこんなにドキドキするんだ?  その感情の正体を一晩かけても知ることは出来なかったのに、翌日に詩音を前にした海斗はようやくわかった。  佐藤さんに恋する詩音はきっとすごく可愛くなっていたんだ。彼女のために佐藤さんのことを調べてることで距離が少しずつ縮まり、俺自身も詩音の魅力に気付いて恋に落ちたに違いない。  ただこのままいけば、詩音も俺も失恋確定。でも彼女はどうだ? 好きな人に彼女がいるって知るだけでもショックなのに、それが理由でフラれたらもっと傷付くに違いない。  その時に海斗はとんでもないひらめきをする。この方法なら、もしかしたら詩音の心の痛みを半減してあげられるかも……そう思いたつと、海斗は意を決して詩音に声をかけた。
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