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「そうだよ、俺は詩音を騙した。ついでに言うと、今日は俺の誕生日で、ショートケーキは俺の大好物だ!」 「な、何それ……じゃあ私は騙されていた上に、あんたの好きなものまで作らされたわけ⁈ もう全てが意味わかんないんだけど!」 「っていうか、みんな俺の誕生日を忘れてるってひどくないか⁈ そりゃ三月だし、バレンタインでやり切った感が出るのはわかるけど、最後まで気を抜くなよ!」 「そ、それは悪かったと思うけど、今は関係ないでしょ⁈」 「いや、ある! 俺の誕生日を忘れているくせに、佐藤さんのことばっかりじゃないか! もっとちゃんと俺のことを見ろよ!」 「……何それ。意味わかんない」 「じゃあ教えてやる! 俺はお前が好きなんだ! だから俺がお前の悲しい気持ち、ショートケーキごと食べてやる! 俺はなぁ、自慢じゃないけど『美味しい』としか言わないんだ! だから詩音が『もうご馳走様』と思うくらい、言い続けてやる!」  海斗からの怒涛の告白に、詩音だけではなくクラスの女子が恥ずかしくなって思わず顔を背けてしまう。 「な、何言ってんの! は、恥ずかしいからやめてよ!」 「し、仕方ないだろ! お前、全然俺の気持ちに気付かないから!」  すると詩音は持っていた紙袋を海斗に投げつけると、慌てて立ち上がって教室から飛び出していく。 「お、おい! これ食べていいんだな⁈」 「勝手にすれば!」  投げつけられたとはいえ、詩音からケーキをもらえて海斗は鼻息を荒くしながら、最上級の笑顔を浮かべた。 「勝手にしろってことは、食べていいってことだよな⁈」  決まりが悪そうに顔を引きつらせたままの淳太に、海斗は嬉しそうに問いかける。 「まぁいいんじゃない?」  友人からの同意が得られ、海斗は更に頬を緩める。 「最後の方、あいつ泣いてなかったよな?」 「ん? あぁ、そうだな」 「うん、それなら良かった……」  海斗は紙袋から白い箱を取り出す。箱を開けると、中にはグチャグチャになったショートケーキがあり、箱の側面にクリームがたっぷりとついていた。それを指で掬い口に含むと、海斗は穏やかな笑みを浮かべた。
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