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整えられた形のいい眉に、二重の大きな目、ぷっくりとした唇は桜貝のようなピンク色をしている。村で「美人」と呼ばれていた女子よりも、ずっと美人だ。
「あっ、えっと、その……」
言いたいことはあるのだが、珠彦の口から言葉は出てこない。少女はその様子を見てクスリと上品に笑った後、言った。
「私、櫻子と言います。年は十五です。よろしくね」
「あっ、俺は珠彦です。年は十二で、ここには奉公で来ました」
少女ーーー櫻子は奉公という言葉を聞くと、すぐに「どちらから?」と訊ねる。珠彦が村のある地方を言うと、「まあ、そんな遠いところから」と驚いていた。コロコロと変わる表情にすら見つめてしまい、珠彦は困ってしまう。そこへ、慌てた様子の使用人が走って来た。
「お嬢様!ダンスの先生がお見えになりましたよ!早くお部屋にお戻りください!」
「は〜い。ごめんね、またね」
櫻子は珠彦に笑いかけ、使用人と共に洋館へと戻っていく。その間、珠彦は櫻子の後ろ姿をずっと見ていた。
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