水野奏は断れない

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 何度も鳴らされるインターホンの音で目が覚めた。昼食を食べた後に少し昼寝しようと横になったら、随分と眠ってしまったらしい。夕方の五時を過ぎていた。玄関に小走りで向かう。 「はい」 「なんだ。水野さん、いるじゃない」  早く出なかったことを責めるように、むすっとした顔で大家さんが封筒を突き出してきた。 「大事な話だから今日中にと思って待ってたの」 「はぁ、すみません」 「ちょっと前からポストに何度も入れてたんだけど、確認してくれた?」  何のことかと首をひねり、あのことか、と思い当たる。宛名も差出人も書かれていない、ちょうど今渡されたのと同じような白い封筒が何度かポストに入っていた気がする。何も書かれていないからとなんとなく開けずにそのままにしていた。 「あれ、わたし宛だったんですか」 「そうでしょう。あなたの家の郵便受けに入れてるんだから。やだ、まだ見てなかった?」 「すみません」  大きなため息をつかれる。ぐいと押し付けられた封筒を受け取り、慌てて開封する。 「えーと、家賃滞納につき、退去のお願い? えっ、わたし払ってるはずです!」 「いやいや、もう半年ももらってないよ。手渡しから振込に変えてから、一度も入金されてない。催促の手紙を入れてもまったく改善されないから、もう出ていってほしいのよ」
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