雨が止んだら

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今後もそれを続けながら、自分が絶対に手にする事のない人並みの幸せや安定を横目に見て、歳をとっていく……。 それが、バカバカしくなってしまった。そうまでして生きる価値のある人生だとは思えなかった。 本当は生まれた時点で、試合には負けている。大逆転のチャンスがあるとすれば、革命を起こすくらいしかない。 社会からドロップアウトして、僕は無職になった。 田舎にいる家族には相談も報告もしなかった。あの人らが僕というキャラクターの育成をするにあたり、目的地を設定した以上、クラッシュしようと脱線しようと、進んできたレールの上に戻るよう求めてくると知っていたから。 貯金を切り崩すようになるのは当然だったし、暮らして行けなくなったとしても構わなかった。人生に未練が無かった。 時間だけが出来たから暇つぶしは必要で、高校生の頃に好きだったデスクトップミュージックを再開した。 感覚的に作っていた物のクオリティーを上げるために、基礎から勉強する時間があった。 言われるままにこなしていた学校の授業や宿題と違って、興味がある事は勉強しているという意識すら持たずに知識が身についた。インターネットがあれば、何でも知る事ができた。 作った曲をそのインターネットで公開してみたら、行った事もない場所にいる、知らない誰かに届いたらしい。あのまま“普通”のふりをし続けていたら、きっと死ぬまで出会う機会のなかった、顔も名前も知らない相手だ。再生回数が増えて、アーティストにそうするかのように、僕の動向を気にかける人が何人、何十人、何百人も現れた。 それをきっかけに、久々に他人と交流を持った。自分のファンを名乗る人が現れるなんて、まったくの想定外だった。
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