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『──座のあなた! 魅力が異性に伝わりやすい日。お洒落をして出かけましょう! ラッキーカラーはシルバーです』
女性アナウンサーの声で目が覚めた。音のした方を見ると、銀ちゃんが慌ててボリュームを下げているのが見えた。
先に起きていたらしい。銀ちゃんは年々、起きるのが早くなっている。眼鏡のレンズにテレビの光が灯っていた。
「ごめん、起こした?」
謝ってくる声に、まだ起きられないで返事をする。
「いや、ううん……」
「氷治、さっきの占いで一位だったよ」
朝から元気な声で言う銀ちゃんは、僕に関する事をよく憶えている。そして、星座占いとかを真に受けるタイプだ。
「聞こえてた」
喉の奥が貼り付いたような感覚がある。鼻声で返事をして、寝返りを打つ。綺麗な布団の匂いに鼻を擦り付ける。
いつもに増して、寝起きが気怠かった。体が重く、頭も少し痛い。雨の音が聞こえる。昨日の夜は静かで落ち着いた雰囲気だったのに、朝の雨は空と一緒に気持ちも狂わせ、憂鬱な気分にしてくれる。
「……異性にモテても仕方がないよなぁ」
それとなく言ってみるが、返事は無かった。
ドライアイで痛む片目を開けて居室の方を見ると、部屋の隅で黙々と荷物の整理をしていた。銀ちゃんは最近、少し、耳が遠い。
「銀ちゃあーん」
声を大きくして呼ぶと、気付いた銀ちゃんが寄ってくる。
「頭痛い?」
朝が苦手な事も、気圧の変化で体調が悪くなる事も、全部分かってくれている。
「うん」
返事をして、寝転がったまま、銀ちゃんに向かって両手を広げた。
「僕のラッキーカラー、シルバーだってね」
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