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一週間が経ったある日、ギッシュの許にオーダーが入った。実の妹を殺してほしいとのことで、十万円を受け取り、その日の夜に妹がいる家に向かった。その途中で一人の少年に会った。
「どうしてついてくる?」
「行き先が一緒なだけでしょ。それで、誰?」
ギッシュは低い声で名乗った。
「ぼくは太津朗。この先の家に住んでる子に、会いにいくんだ」
太津朗は嬉しそうに言った。
「……俺もその家に用がある」
「連れていってあげる!」
――まあいいか。
ギッシュは嬉しそうな太津朗を冷ややかに見ながら、歩き続けた。
「あの子ね、とても可愛いんだ。今夜好きって言うんだ!」
話している間に、家の前に着いた。
ギッシュがチャイムを鳴らすと、ターゲットの少女が出てきた。
「お前には酷だろうが、事実を受け止めてもらわねば」
「え……?」
ギッシュは左手に握った短刀で、少女の心臓を刺し貫いた。鮮血に染まった短刀が骸から引き抜かれ、どさりと倒れた。
「なんで? なんで? どうしてこんな目に遭わなきゃいけないの!?」
太津朗が骸に駆け寄り、地面についた膝と両手が、鮮血に染まっていく。
「理由くらいは教えてやるか。こいつを憎み、殺してほしいという者がいるからだ」
右頬に返り血を浴びたギッシュが、冷ややかな声で言った。
「今日こそはって思っていたのに! なんでよりによって、今日なのさ! 殺すなんて……あんまりだ!」
太津朗が泣き叫んだ。
「お前もここで死ぬ。あの世で、自分の思いを告げるがいい」
「ふざけないで! この人殺し!」
「それで俺の心を、傷つけた気になってんのか? 甘すぎるぞ。こんなの、お前が知らないだけだ。毎日誰かが死んでいる。それを知らないと言い張って、自分の想いすら伝えられない。小心者のお前には、俺の闇の一部を教えてやる。冥途の土産だ」
ギッシュは言いながら、右手の手袋を外した。
「え……!? 右手、失ったの……?」
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