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 満開の桜の下で、あなたは私に「好きだよ」と言った。    暖かい春の風と、澄み渡る青い空。  私の返事に笑うあなたの髪に花びらが舞い降りた。  不意に、あなたの手が私に伸びる。  摘んだ花びらを見せてまた笑う。  開いた指から花びらがひらひらと落ちて、私はそれを見ていた。  あなたはその手でそっと私の手を握り「帰ろうか」と言った。  照れくさくて、2人して下を向いた。  今日からは友達じゃない。  あなたの髪についたままの花びらを、気づかれない様に後ろからそっと手に取ってハンカチに挟んだ。  日記帳にその花びらを貼り付けた。  大切な記念日の思い出に…。
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