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 猫なで声がオフィスに響く。今日も真山亜未は営業1課のエースと言われる三崎瑛太郎に媚びを売っている。  営業2課のアルバイトとして先月から勤務している野原妃奈子は、担当営業から頼まれたデータの入力を行いながら眉間にシワを寄せる。  妃奈子が行っている作業は本来なら亜未のサポートのはずだ。  勤務し始めて1ヶ月。最近では見積書や請求書の作成など金銭にかかわる部分以外は、亜未を通すことなく、担当営業から直接頼まれることが増えた。  仕事は面白いので問題はないけれど、より良い男を捕まえるために力を注ぐ亜未よりも立場や給料が低いことに苛立ちを覚える。  パソコンに向かって単純な入力作業を繰り返しながら、三崎瑛太郎に目を向ける。妃奈子にとって、彼と同じ課に配属されなかったのは不本意だった。  彼が従兄の啓太を陥れた張本人に違いないはずなのだ。  1課と2課、しかも営業と営業事務では滅多にかかわりあうことができない。瑛太郎に近づく術を見つけられないまま、妃奈子は日々の業務をこなしていた。
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