エピソード.1

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エピソード.1

 コスメは、夢を与える魔法だ。  スキンケア、ベイスメイク、ポイントメイク、ヘアケアにネイルケア。  ありとあらゆる手段と方法を使い、その人にしかない、その人だけに合わせたぴったりの魔法をかけると、人はどんな人でも誰もが憧れる物語の主人公へと姿を変える。  ここは、そんな夢を叶えたい全てのお客様が集まるお店『Belle fleurs*』。  今の自分を素敵に変えたいというあなたの夢を、私たちが叶えます。  * * *  カランカランッ―― 「いらっしゃいませっ」  店のトビラが開き、来店を知らせる鐘が鳴る。  現れた一人の女性に気が付くと、私は棚に商品を並べていた手を止めてその人の元へ駆け寄った。 「いらっしゃいませ。何かお探しでいらっしゃいますか?」 「あ、えっと、ここのスキンケアが良いと友人から聞いて来たのですが…」  応えてくれた女性は今日が初めての来店。  長い髪を一つに束ね、膝丈のスカートに淡い色のニットがよく似合うナチュラルメイクの女性だった。  女性は緊張した面持ちで一度店内に目をやった。  私も女性の目線に合わせて同じ方向を見やり、店内の装飾に視線を移した。  大通りに面した街の中心に佇むお店『Belle fleurs*』。  三年前にオープンしたこのお店は、スキンケアからベイスメイク、ポイントメイクなどお客様が必要とする全てのコスメを取り揃え、その人にしかない、その人だけに合わせたお手入れやメイクの提案・アドバイスを行っている。  働いているスタッフは、皆それぞれの知識と経験を積み重ねたベテラン販売員たちで、お客様が望むあらゆるご要望や理想を様々な視点と角度から精査しカタチに表してお客様に提供している。  私はこの店で働き始めてまだ一年目の新人スタッフだ。  他のスタッフのように満足な知識も経験もなければ、お客様がおっしゃる全てのご要望を理解し提案できる技量もスキルも全然ない。  それでも、自分ができることを精一杯行い、笑顔でおもてなしをすることで来ていただいたお客様が少しでも喜んでくださり、この店を好きになっていただけるのであれば、どんな努力もやってみせる自信がある。  このお客様は、どんなことをお望みなんだろう?  私は目の前にいるお客様のことが知りたくて、持ち前の笑顔を浮かべて話しかけてみた。
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