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好き。
そう思った瞬間、僕は晴夫くんに抱きついていた。そして、頬には限りないほどの涙が次々に流れている。
ゆっくりと、背中に温かさを感じた。
彼の手が、僕の背中にあるんだ。
彼の体温が、背中から体全体に染み渡る。
「僕っ…君のことがっ…」
嗚咽と共に自然と、言葉が喉の奥から絞り出されていく。
「好きだ」
そう言葉に出すと、体の奥から嗚咽がせりあがってきて、彼の体をもっと強く抱き締めた。でも、そうすると、彼の匂いに包まれて、もっともっと涙が溢れだした。
「ありがとう」
彼が優しく言う。
「僕ね、結婚するんだ。来年。二十四ではちょっと早いかな」
なんだか、全ての言葉が優しくて、柔らかくて、このまま溶けてしまいそうだ。
「だからね、優介くん、君にはもっといい人がいると思うんだ。」
僕の脳は素直にその言葉を受け入れることが出来た。
僕は晴夫くんの肩に頭を置いたまま、散っていく桜を眺めていた。
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